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摂津の国難波の里に、おじいさん(老翁)とおばあさん(老婆)がおりました。
おばあさんは四十歳になるまで子供のないことを悲しみ、住吉にお参りをしていました。すると住吉の大明神がこれを憐れに思し召して、四十一歳という年齢のときにお子ができたのです。おじいさんの喜びはたいへんなものでした。
やがて十月経って、かわいらしい男の子が生まれました。
しかし生まれ落ちてからずっと、背丈が一寸しかなかったものですから、やがて一寸法師と名付けられました。年月が経って、早十二三歳になるまで育てたのですが、背丈は伸びず生まれた時のままでした。
おじいさんとおばあさんがよくよく考えるに、「これはただ者ではない。きっと化け物の類にちがいない。私たちがどんな罪の報いでこんな化け物を住吉からいただいたものかのう。全く、情けないことよ」と、その嘆くさまは傍から見ても気の毒なほどなのでした。
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