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『光源氏』などと、呼び名ばかりが大袈裟なのですが、
世間から非難され、恥ずかしめをお受けになることも多くあって、
源氏の君が好色である事を後の世までも伝え、
いかにも軽率であるような評判を流布し、隠し事まで語り伝えようとしますのは、
世の人の意地悪さというものでしょうか。
実際に源氏の君が非難をお受けになることもあるのですが、
ご自身ではたいそう世間の目を憚り、まじめに振舞っていらっしゃいますから、
艶っぽく面白い事などはなく、あの交野の少将には笑われたかもしれません。
源氏の君がまだ中将というご身分でいらした時は、
内裏にばかり伺候していらっしゃいましたから、
左大臣邸にはたまにしかおいでになりません。
左大臣邸では、『どこぞに人目を忍ぶ恋でもあるのでは』と、
源氏の君をお疑いになることもあるのですが、
当のご本人は浮気っぽく露骨な好色などお好みではないのです。
あってはならない御振舞いがまじることも、稀にはあるのでした。