私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

July 8, 2010
XML
カテゴリ: 源氏物語

やっと起き出で給うた姫は、濃い鈍色のなよなよとした喪服を着て、
あどけなくにこにこしていらっしゃるのです。

姫は君が東の対にお渡りになる間に出ていらっしゃって、
庭の木立や池の方を御簾越しに覗いてご覧になります。



暇なく出入りしているのが見えるので、

『ほんとうに、面白いところだわ』

 と、お思いになります。

御屏風などに描かれた面白い絵などを眺めるうち
気が紛れておいでになるのが、いかにも幼いのです。

 源氏の君は二三日参内もなさらず、この姫にかかりきりでいらっしゃいます。

君はこのまま手本にでもしようとお思いなのでしょうか、
手習いや絵などをさまざまにお描きになって、姫にお見せになるのです。

字も絵も、たいそう趣あるように書いて集めていらっしゃいます。

「武蔵野といへばかこたれぬ」と、紫の紙に書き給うた特にうつくしい筆跡を手にとって、
姫はじっと見ていらっしゃいます。そこには少し小さな文字で、

「ねは見ねど あはれとぞ思ふ武蔵野の 露わけわぶる 草のゆかりを

(まだ供寝はしていないけれど、とても愛しく思われます。
武蔵野の露をかき分けてもお逢いできない紫草のゆかりである姫の事を)」

 と、書いてあります。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  March 7, 2017 05:13:47 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: