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桐壺帝の御譲位により春宮が朱雀帝となられ、世の勢力も
右大臣方へと変わってしまいましたので、源氏の君は何事も憂鬱にお思いになります。
女君たちがここでもかしこでも、源氏の君のお渡りがないことを嘆き重ねておいでです。
その報いなのでしょうか、つれない藤壺中宮の御心を、
尽きせず思い嘆いていらっしゃいます。
帝がご退位なさいましてからは、
以前にも増して帝のお傍に付き添っていらっしゃいますのを、
皇太后となられた弘徽殿女御は不愉快にお思いなのでしょうか、
内裏にばかりおいでですので、藤壺中宮には立ち並ぶ人がなく気安げなのです。
桐壺院は折節につけ管弦の御遊びをお好みで、世の評判となるほどおさせになり、
仙洞御所での今のお暮らしぶりも申し分がありません。
ただ、内裏にお住まいでいらっしゃる幼い春宮のことを恋しくお思いあそばします。
春宮の御後見のないことをお気に掛けていらっしゃって、
何事も源氏の大将にお言いつけになります。
源氏の君は気が引けるのですが、それを嬉しくもお思いになります。