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左大臣邸では、御物の怪がひどく起こり、女君がたいそうお苦しみになります。
御息所が、「『御自分の生霊』とか、『亡き父大臣の御霊』などと言う者がある」
と、聞き給うにつけ考え続けてみますと、我が身の憂き、嘆きばかりで、
女君を苦しめてやろうなどと思う心などないのです。
けれども、物を思うと魂が身から浮かれ出て、人にとりつくこともあるといいますので、
はっと、思い当たるふしがおありなのです。
近頃は何事につけ物思いの限りを尽くしてきたけれど、
こんなにまで心を砕くようなことはありませんでした。
御息所を無視し辱めを受けた御心を鎮めることがお出来にならなかったからでしょうか、
少しでもうとうとなさいますと、あの姫君と覚しき人の、
たいそう美しくしていらっしゃる所に行って、
正気では考えられないほど猛々しく激しい怨み心が出てきて、
女君を引っ張り回したり、打ちのめしたりする夢をたびたびご覧になるのです。