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私の母は何度か流産を経験したらしく、
「大事に大事に、寝て暮らすようにしていても流れる」のだと言う。
ある日父の会社の慰安旅行で石狩川の川下りがあり、
母もその船に乗って大きく揺られながら、
底冷えするであろう秋の船遊びを満喫したらしい。
「あんたがお腹にいることは、わかっていたんだけど、
生まれる時はちゃんと育つんだね。あはははっ!」
と、子宮壁にしがみついた私の生命力の逞しさ・したたかさは、
この母の胎内で鍛えられ獲得したようだが、
上記母の「大事に大事にしていた」が本当かどうかは、どうも怪しい。
ところで仙台生まれの家人の話は、もっとアヤシイ。
「親父によるとな、
嵐が過ぎた朝、広瀬川の賢淵(かしこぶち)に
朱塗りの立派なオマルが流れて来たんだと。
あんまりきれいなもんで『高く売れるべな』と思って拾ってみたら、
中に赤ん坊がいたんだそうな。そいつがおれなんだってよ」