私訳・源氏物語

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September 14, 2012
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カテゴリ: 源氏物語つれづれ

[源氏物語] ブログ村キーワード

源氏は故・桐壺帝の御子ですから、帝から多くの遺産を継承したはずです
(自邸としている二条の院は、故母・桐壺の更衣邸ではありますが)。

実際須磨・明石へ流謫する際、紫の上に御荘など多くの財産管理を任せています。

その上六条御息所からは娘の斎宮の後見人を任され、
藤壺中宮からも冷泉帝のお世話を頼まれています。

つまり前(さき)の春宮妃(六条御息所)と前の帝の中宮(藤壺)という
二人の宮家の財産をも、その御子を通じて受け継いだことになりましょう。

加えてその地位たるや太政大臣に昇進しています
(藤裏葉では、太上天皇にまで上り詰めます)。

ここに至って光源氏は、イケメンで好き者なモテ男というだけでなく、
およそこの世で手にし得る最高の権力と財力を手にしたことになります。

ところが光源氏という男は不思議な事に現実の生活を楽しめないようで、
いつも「出家したい。仏道修行に励みたい」と言います。

そのくせ「私が出家したら、あなたがお寂しいだろうと思って」と、
紫の上をダシにして出家なんぞする気配もない、いい加減な男でもあります。

この後「乙女」の巻で、光源氏は六条御息所の所有地を含む2万坪にも及ぶ敷地に
「六条の院」という邸宅を建設し、四季になぞらえた建物を造営して
女君たちを住まわせます。

六条の院は源氏の理想のハーレムというわけです。

しかしハーレムが女性たちにとって理想郷なはずがなく、
六条の院に移り住んでから源氏ワールドには翳りが見え始めます。 

渡辺淳一が「『仲の良い夫婦が幸せな人生を送りましたとさ』というだけでは、
小説として成り立たない」というような事をどこかで言っていましたがまさにその通りで、
「源氏物語」も青年貴族の溌剌とした恋愛遍歴だけでは退屈なわけです。

時代を超越して人間の心の底に澱む「暗く深い苦悩」が描かれているからこそ、
千年もの間老若男女を問わず読み継がれてきたのだと思います。

その苦悩の舞台がどこあろう光源氏が理想とした「六条の院」とは、
何と皮肉な事でしょう。

そしてこの「薄雲」の巻での「春秋論」こそ「六条の院」建設、言い換えるなら
「暗く深い苦悩」に舵を切ったターニングポイントと私には思えるのです。






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最終更新日  March 4, 2017 11:07:49 PM
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