私訳・源氏物語

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December 6, 2017
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カテゴリ: 源氏物語
紫の上は重くお患いののち、すっかりご病気がちになられてしまいました。

どこがどうということはないのですが、
年月が重なりましても恢復なさる望みもなく日ごとに衰弱なさるご様子に、
源氏の院は限りなく思い嘆いていらっしゃいます。

院は、少しでもご自分があとに残されますことを
耐えがたくお思いでいらっしゃいます。

紫の上のお気持ちでは、この世に不足なことは何一つなく幸福に暮らし、
気がかりなお子もない身ですから、
無理をしてまで長く生きたいともお思いにならないのですが、
長い年月を過ごしてきた夫婦のご縁を離れて出家なさると、
どんなに悲しませ申すことになるかと、
それだけがしみじみと哀しく思われるのでした。

「後世のために」と、尊い仏事を多くおさせになりながら、

「たとえ暫しの命でも、せめてこの世に生きている間に出家の本意を遂げて、
仏道修行に励みたいのでございますが」

と、常に願い出ていらっしゃるのですが、決してお許しになりません。

そうはいっても、
院のお気持ちにも同じような願いは以前からおありでしたから、
紫の上がこうして真剣に出家をお考えになられた機会に、
『同じ道に入ってしまおうか』とお思いになるのです。

一度出家なさったならば、俗世を振り返るおつもりはなく、
死後には同じ蓮の葉に座を分けようと契を交わし、
信頼しあったご夫婦仲ではいらしても、
この世で修行なさる間は同じ山であっても峰を隔てて
互いに逢うことができない住処に住むべきとお考えになりますと、
紫の上がひどく重篤なご様子でいらっしゃるのに
出家して離れ離れになるのはとても心残りで、
なまなか山籠もりしても気がかりで道心もかき乱されるにちがいないと
ぐずぐずしていらっしゃるうちに、
道心などない女人にすっかりたち遅れてしまいました。

紫の上にとっては、院からのお許しがないにもかかわらず、
ご自分一人の考えで勝手に出家なさるのは体裁が悪く、
ご自分の本意ではありませんので、
お許しいただけないことを恨めしく思っておいででした。

けれどもご自分が女の身であることをも罪深さの理由ではないのかと、
気になるのでした。





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最終更新日  December 6, 2017 10:12:14 PM
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