読書の部屋からこんにちは!

読書の部屋からこんにちは!

2008.07.12
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カテゴリ: 小説
先日の日記でちょっと触れた、宮尾登美子の本の中で一番好きな「天涯の花」。

電車の中でも寝ないで読み続け、一日ちょっとで読んじゃいました。

徳島県の田舎の施設で育った無垢な少女が、想像を絶する山奥の神官の家の養女となる。年老いた養父母と暮らしながら、少女は清らかさを失わずに成長し、山の遭難者と恋に落ちます。
ストーリーは単純ですが、ヒロインの気持ちは手に取るように丁寧に描かれていて、静かな生活も平穏なだけとは言えず、そのときどきのヒロインの悩みが読み手の胸に迫ってきます。
女性として人を愛することを知ったヒロインは、清らかなだけではいられず、年老いた恩ある養父を捨てる計画までたてるのです。それを、父母のように慕って育った施設の先生にも相談できない、彼女の思慮深さといじらしさに、涙が誘われました。
この物語が深く私の心に残すものは、もちろん、ヒロインの幸せを祈る気持ちです。
一回り大きく強くなったヒロインの姿に、確実な幸せがそばまで来ていることを暗示したままで、物語は終わってしまいます。この、憎いまでの効果的な終わり方!
この中途半端とも思える終わり方のおかげで、私の心にいつまでも清浄な山の空気が感じられるような気がしました。







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Last updated  2008.07.12 20:30:50
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