ぐりっちのいるところ

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ぱぷりか。

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それはそれはいっぱいで。

・・・夜風が気持ちいいな。

快晴｡夏日。
今日は幼児教室ＯＢ恒例の潮干狩り。

ちょっと涼しげな頭に真っ白なタオルをきゅっと巻いて、
職人おとどさんはおにぎりぱくつく間も惜しげ。
片手にはジョレン、片手にはもう重たげなバケツ。
潮だまりへ降りていく背中に

小走りについていくのを見送ってから
用を足しに越えた堤防の向こうの松林の下で
そのコに会った。

コンクリートブロックで出来た簡単なお手洗い。
明り取りもない、その通路の暗がりに
小さな目がふたつ。
お日さまいっぱいの外から入って
目がなれた時、
それがお行儀よく座ってる真っ黒なラブラドールの仔だと
ようやく気が付いた。

初めはトイレに入ってる先客のお供かな？

誰もいなくて。
済ませて出るとき
目が合った私にふる尾っぽが可愛くて
出口で手を振ってみせたのだけど、
近寄っては来ても、決してその暗がりから出てくることはなくて。

乾いた空っぽの紙皿と空っぽのカップめんの器をみて、
それで、わかってしまった。

いつかゆかちと遊んだ雑木林で
空っぽのハム･ケージを見つけた時を思い出した。
ドアを開きっぱなしにしたそこには
さっきまでそのカゴの主（ハム）がいたみたいに
靴下が膨らんでたんだ。

この仔はここで誰かを待ってるんだ。
ずっと。

後で手洗いにたったゆかちと友だちが
器に水を入れてあげたら、貪るように飲んでたって。
水道のところまで
抱えて連れて行っても、呑まなかったのに。

もしかしたら、
事情があって家で飼えない誰かが、
ここに通って面倒みてるのかもしれない。
私たちが去ったあと、
待ち人は来たのかもしれない。

きっとそうなんだ。と思いながら、
出入り口まで着た途端パッと背を向けて
暗がりに戻っていったあの仔の痩せた背中が
まだ瞼の裏に残ってる。

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