ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Feb 26, 2006
XML
「ドボヲタの困惑」

 僕らがこの曲を練習しだしたのは去年の始め。以来、弾くたびに聴くたびに曲を惚れ直してしまう。おそらくこの編成で僕が最も好きな曲。臨時記号や転調の嵐には頭を抱えるが、全体にわたり劇的で交響詩のようなので、たぶん振付け師さんが気に入ると思う。誰かこの曲でフィギュアスケートを踊ってほしい。

1楽章: 何の色気もないぶっきらぼうな乾燥した出だしだが、曲は一気に北上していって、フィヨルドな響きになる。青黒い海と白い波しぶき。次から次へと曲想が変わり、特に終わりのほうなんて、いきなりモルダウ川が流れたり、新大陸到達への予兆を感じさせたり、アンジェラスの鐘が鳴り響いたりと、それはそれはお忙しい。

2楽章: わずかに高めの音域でチェロが渋い旋律を謡うのはかっこよいが、背後のバイオリンとビオラのピチカートはちょっとマヌケ。途中激しく燃え上がるとこがあって興奮するが、フラット6つってのはやめてほしい。

3楽章: ドゥムカとかフリアントとかの土臭い民謡を期待してはいけない。けっこう普通っぽい。でもいきなりアラビアンな旋律が出てくるので油断できない。トリオの部分のリズムが楽しくて興奮するが、シャープ5つってのはやめてほしい。

4楽章: ここぞという絶妙なタイミングで必ずビオラの出番になる。音域といいメロディラインといい、ビオラさんご満悦。

 この曲、はっきり言ってドボルザークらしくない。ボヘミアの大地の匂いが漂ってこず、意外にも洗練されているので、彼の民俗性を好む人には物足りないかもしれない。僕自身はすごく好きな曲なのだが、こういう「ドボルザークっぽくない曲」を賞賛することは、彼の個性を真っ向から否定することになりかねないので、「ドボヲタ」の僕としては非常に悩む。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  Mar 4, 2006 07:45:42 AM
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ピカルディの三度TH

ピカルディの三度TH


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: