ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Nov 10, 2006
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「名曲の条件」

 今日は月例のトリオの練習の日。 先月の練習 に引き続きブラームスの1番に挑んだ。

 曲の感じがつかめてきたような気がする。チェロのルースとの息も合ってきた。例の五連符とか、リタルダンドとか。
 当初、僕はこの曲にはどうも親近感が持てないでいた。第一、シャープが五つも付いてるのが許せなかった。クラリネット五重奏曲とかホルン三重奏曲のように移調楽器がメインの楽曲で、シャープやフラットが多くなってしまうのは泣く泣く認めてあげてもいいけど、やっぱりシャープ五つってのはビビる。
 でも、今日の練習を機にこの調性にハマッてしまった。クセになりそう(?)。

 トリオの名曲として知られる メンデルスゾーンのトリオ1番 とは対照的な曲だと思う。比べること自体が間違ってるかもしれないが、どっちをより好むかは究極の選択。

 例えば、ブラームスのは、幸福感に満ちた長調で優雅に始まるのに対し、メンデルスゾーンのは緊張感の張り詰めた短調。いきなりピアノに急かされながら始まる。


 名曲というのは、やはりメントリのようなハッピーエンドな構成の曲を言うのだと思う。交響曲で言うなら、「運命」にしろ「第九」にしろ、「未完成」や「新世界」にしろ、ブラームスの一番だって、チャイコの五番だって、ラフマニノフの二番だって、僕の好きな短調の曲は、どれもきちんと長調に変わってハッピーエンド。ずばり、それが名曲の条件。 ピカルディの三度 みたいなもんか。

 メントリの影に隠れて、あまり脚光を浴びてはいないこのトリオが哀れにも思えてくる。もっと好まれてもいいはず。緩徐楽章(3楽章)なんかも実に奥深そうだし、最もブラームスらしいと言える。なんとも内向的で否定的。ブラームスの、後ろ向きで被害妄想癖のあるところが深読みできる。

 そして、五つもあったはずのシャープが、いつのまにか二つに減っていることに気づく。長調から短調に変わるということは、そういう利点もあるのだ(笑)。譜面上で黒光りしていたシャープ軍団の威圧から開放され、視覚的にもゆとりを感じる。やっぱりブラームス氏、全ては計算ずくだったのかと、変なとこで感心したり。

 いろいろと考えさせられながらも楽しく弾くことができた。

 ちなみに、ピアノのセス曰く、ブラームスの室内楽曲のピアノパートには、十本の指だけでは演奏不可能な箇所が、一曲につき必ず一小節はある、とのこと。セスほど上手なピアニストですら弾けないということは、よっぽど難所なのだろう。この曲で言えば、1楽章の後半。





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最終更新日  Nov 13, 2006 08:09:12 PM
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