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Sep 27, 2005
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カテゴリ: 演劇評論
現在形の批評 #7(俳優)

伊藤俊人


悲しみを感じるコミカルさ


今回は私たち記憶から忘れ去られないよう、は2002年5月24日に逝去して今年で3年が経った俳優、伊藤俊人について記す場にしようと思う。


日芸出身の彼が同級生だった三谷幸喜が主宰する劇団「東京サンシャインボーイズ」に参加したのは1990年、「12人の優しい日本人」と題された陪審制度を扱った舞台でだった。その舞台で伊藤はその場の空気が悪くなるのは議論を進める上で不都合が生じるために仕方なく仲裁に入るという典型的日本人の一人を演じた。


「90年代初頭、最もチケットが取りにくい劇団」にまで成長させたのは間違いなく三谷幸喜も語ったように機転が利いた伊藤俊人の存在が大きかったのである。


それを示すエピソードとして、ビルに締め出された住民を描いた舞台「もはやこれまで」(92年・東京サンシャインボーイズ)で、まだ出番があるにも関わらず奈落に落ちた小林隆を助けるためにとっさにからはこう言った「みろ! 一階に引っかかってるぞ!」。


彼は悲しみを背負った人物を演じた俳優だった。上の者からの嫌言と下からの突き上げの中で右往左往して取り持つ人間を演じる彼が忘れられない。その代表作が舞台「ショウ・マスト・ゴー・オン」(初演・91年)、TVドラマ「王様のレストラン」(CX系・95年)である。そこには青い悲しみに溢れていた。己を犠牲にしても周りとの調和を重んじる。決して黒色ではない、青色のような悲しさとコミカルさが混じる演技は我々日本人的ないい人が見事に存在していたのである。もちろんこれ以外にも、冷徹でサディステックな演技も得意としていた。TVドラマ「TRICK2」(ANB系・02年)や「踊る大走査線」(CX系・97年)での演技はそれである。


また、敏捷性溢れる身のこなしはタップから培われたものであり、身体能力も高かったのである。もし、今でも生きていたなら八嶋範人はこんなにも売れてはいなかったはずである。なぜなら、抜群の敏捷性があり、つっこみ役が出来て笑いが取れ、それだけでなく、そこに悲しみが加わることによってそこはかとない重層性のある演技をする彼と比べれば、似ているようでいても八嶋範人ではやはり一歩引けをとってしまう。


最後の舞台作品となった作・演出三谷幸喜「 VAMP SHOW 」(パルコプロデュース・01年)は是非観ていただきたい。DVDも出ている。きっと伊藤俊人の演技力に感嘆するはずだ。





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Last updated  Jan 13, 2007 10:54:30 PM


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