プレリュード

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2006年02月02日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

1950年代にレコード界に「ステレオ録音」という画期的な録音方式が開発されて、最もその効果を示した音楽ジャンルがオペラでした。 歌手たちが左右スピーカーの空間で、まるで舞台の上で歌って演技しているかのような臨場感がたまらない魅力となりました。

その頃に「オペラ指揮の職人」とまで呼ばれていた人がいます。 指揮者トゥリオ・セラフィン(1878-1968)がその人です。 かの有名なアルトゥーロ・トスカニーニの許で副指揮者として勉強をしていたセラフィンは、1900年代初めにロンドン・デビュー、そしてニューヨークのメトロポリタン歌劇場に移ったトスカニーニの後を継いでミラノ・スカラ座の音楽監督の地位に就く(1909年)など、オペラ一筋かと思えるほどのオペラ指揮者となっています。

1924年にはセラフィンはアメリカに渡り、1934年までメトロポリタン歌劇場の指揮者を務め、イタリア・オペラのアメリカ初演を数多く手がけたと言われています。

セラフィンがアメリカに渡る前年(1923年)に、イタリアではムッソリーニが総領となり独裁国家として歩き始めていました。 ムッソリーニはローマに居り、古代ローマ帝国の如く過去の栄光を甦らせるために最高の首都とする計画を持っていました。 

その一つとしてオペラハウスも俎上に上がり、ミラノのスカラ座以上の歌劇場をローマに作ることになりました。 ローマのコスタンツィ座を大改装して「王立オペラ座」となり(1928年)、その歌劇場の音楽監督にセラフィンを望んだのですが、彼はもはやアメリカに渡っていました。

当時ミラノ・スカラ座はトスカニーニが君臨しており、イタリア・ファシスト党に対して反抗的な言動を起こしていたので、ムッソリーニはローマの「王立オペラ座」には、イタリア人指揮者でトスカニーニに対抗できる唯一のオペラ指揮者としてセラフィンの就任を考えていたそうです。

アメリカに渡って活躍するセラフィンは、2度におよぶムッソリーニの招きを蹴って帰国しなかったのですが、1929年にアメリカ大恐慌が起こりました。 いかにメトロポリタンとは言え、給料カットなどの事態が起こるに及んで、イタリア・ファシスト党はアメリカからの帰国を演奏家たちに呼びかけました。 



トスカニーニのような「カリスマ的」なところはなく、温厚な人柄で、1960年代の「イタリアオペラ黄金時代」のスター歌手(マリア・カラス、レナータ・テバルディ、アントニエッタ・ステルラ、ジュリエット・シミオナート、マリオ・デル・モナコ、カルロ・ベルゴンツィ、ティト・ゴッビ、エットーレ・バスティアニーニなど)からも尊敬され慕われた指揮者だったそうです。

そして後世に残るセラフィンの偉業は、英デッカやドイツ・グラモフォンに残した数多くのイタリア・オペラの録音と共に、マリア・カラス、レナータ・テバルディ、マリオ・デル・モナコなどを見出したことに尽きると思います。

1968年の今日(2月2日)、指揮者トゥリオ・セラフィンは90歳の長寿を全うしてイタリアで亡くなっています。

そのセラフィンが遺した数多くのオペラ録音の中から、「ラ・ボエーム」を選んで聴こうと思います。

レナータ・テバルディ(ソプラノ)、カルロ・ベルゴンツィ(テノール)、エットーレ・バスティアニーニ(バリトン)、チェザーレ・シェピ(バス)といった当時のキラ星のようなオペラスター歌手を集めた1959年の古い録音ですが、表情豊かで落ち着いた風情のテバルディ(ミミ)、ベルカント・キングのようなベルカント唱法第一人者の、素晴らしいロドルフォ役のベルゴンツィ、脇を固める全盛期のバスティアニーニ、シェピの絶品の巧さなどが、全編に流れるプッチーニの甘美な旋律を丁寧に描いていくセラフィンの巧さが光る、まさに歴史的名演と呼べる演奏だと思います。

1896年の2月1日に初演された「ラ・ボエーム」、1922年の同じ日に生まれたレナータ・テバルディ。 この2日間の音楽カレンダーを一つにしてこのCD盤を聴いて、今は亡きイタリアオペラ黄金時代の再現芸術家を偲ぼうと思います。

愛聴盤 
レナータ・テバルディ、カルロ・ベルゴンツィ、エットーレ・バスティアニーニ、チェザーレ・シェピ、トゥリオ・セラフィン指揮 ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団・合唱団

POCL3802 1959年録音 2/02
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・ミュージック POCL3802 1959年録音)

セラフィン

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今日の音楽カレンダー

1875年 誕生 フリッツ・クライスラー(ヴァイオリニスト・作曲家)
1902年 誕生 ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリニスト)
1953年 誕生 リッカルド・シャイー(指揮者)
1968年 没  トゥリオ・セラフィン(指揮者)



ともの『 今日の一花 』        節分草

昨年の2月に近所の庭で咲きました鉢植えの節分草です。今年の開花も期待していますが、まだ芽も出ていません。

2/02撮影地 大阪府和泉市 2005年2月





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最終更新日  2006年02月02日 00時07分24秒
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