プレリュード

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2006年02月05日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽 』    ヴェルディ作曲 オペラ「オテロ」

作曲家でもあり台本作家でもあったアリゴ・ボーイト(1842-1916)(オペラ「メフィストーフェレ」の作曲家)から、有名なシェイクスピアの戯曲「オセロ」を読ませてもらったジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)は、その台本の出来上がりに心の中に火を付けられたのです。 

ヴェルディはその頃にはオペラ作曲のペンを折って、静かに余生を過ごそうとしていたようです。しかし、この台本によってシェイクスピア悲劇の深い人間的な暗さと悲しみを、歌と音楽によって描こうと意欲を駆り立たせて7年かけて、1876年に書き上げたのがこのオペラ「オテロ」でした。

15世紀のキプロス島での悲劇。 ムーア人でありながらヴェネツィア共和国の貴族の娘デズデモーナを愛し合って結婚したオテロは、部下のイアーゴの野心の策に弄されて妻デスデモーナを殺してしまい、それが誤認だったとわかって自刃するという物語です。

16年間の沈黙を破って書き上げたこのオペラは、ヴェルディの最高傑作の一つに数え上げられているのは、台本がしっかりと書かれているのと歌と音楽が実に見事なオペラに仕上がっているからでしょう。

オテロに吹き込まれた妻への疑惑が嫉妬に変わり、やがて愛が崩れていく、愛の誤認のドラマと言えるでしょうか。 ムーア人とヴェネツィアとの政治的・人種的な問題などを絡ませながら、オテロの苦悩などを演劇的に深く描いているところに、このオペラの奥行きの深さを感じます。

オペラ「オテロ」は、開幕の凄まじいオーケストラの総奏が嵐を描いており、戦勝して凱旋したオテロの第一声の輝かしい迫上がりに至る、息もつかせぬ進行と緊迫の音楽で始まります。 まさにヴェルディが渾身を込めて書いたシェイクスピア劇の劇的な表現は、幕開き冒頭からただならぬ様相をみせています。

また第一幕の幕切れのオテロとデスデモーナの「愛の二重唱」では、チェロのオブリガードによって静かな夜に愛を囁く二人を、ロマンティックに描いて「愛」を描いています。 最後に「もう一度、口づけを・・・」と囁きあいながらディミヌエンドで消えていく様は、まるで嘆きの愛の伏線のようで、美しも悲しいシーンが描かれています。



このオペラ初演時にはかの有名な指揮者アルトゥーロ・トスカニーニがオーケストラピットでチェロを弾いていたそうで、オペラがはねて自宅に帰った彼が、寝ている家族を起こして「さあ、起きて! ヴェルディにひざまづいて下さい。 今夜、スカラ座で奇跡が起こったのです」と言ったそうです。

その初演が1887年の今日(2月5日)、ミラノ・スカラ座で行われています。 ヴェルディ、74歳でした。

愛聴盤 マリオ・デル・モナコ(T) レナータ・テバルディ(S) アルド・プロッティ(Br) カラヤン指揮 ウイーンフィルハーモニー

POCL2334 1962年  2/05
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・クラシック POCL2334 1961年録音)

オテロ

まさにこの「オテロ」を歌うために生まれてきたのか、と思うほど「空前絶後」のオテロを歌うモナコの強靭な「黄金のトランペット」が第一幕冒頭の凱旋の第一声から、聴く者を釘付けにする素晴らしい声と演技です。

ドミンゴの「オテロ」も素晴らしいのですが、モナコの前ではずっと影が薄くなってしまいます。カラヤンの美麗・華麗な音楽がウイーンフィルの艶やかなアンサンブルを伴って、DECCAの名プロデューサー、カルショーの工夫を凝らした録音技術が40年以上経っても、色あせることなく鮮やかに甦っている、まさに「人類の遺産」となる総合音楽芸術に時間を忘れて酔ってしまいます。

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今日の音楽カレンダー

1887年 初演 ヴェルディ オペラ「オテロ」

1911年 誕生 ユッシ・ビョルリンク(テノール)

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ともの『 今日の一花 』         梅

2/05撮影地 大阪府和泉市 2005年2月





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最終更新日  2006年02月05日 16時42分57秒
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Re:オペラ「オテロ」/梅(02/05)  
素晴らしい梅の写真ですね!!

梅は咲いたか...
うちの近所も咲いているのかな...今年はあまり気にしていませんでした。
(2006年02月05日 20時51分34秒)

イィヴィ平野さん、ありがとうございます  
とも4768  さん
イィヴィ平野さん
>素晴らしい梅の写真ですね!!

>梅は咲いたか...
>うちの近所も咲いているのかな...今年はあまり気にしていませんでした。
-----

これは昨年の2月に撮った写真なんです。今年も見事に咲いて欲しいですね。今日はまだ蕾でした。今月の20日以降の開花になるようです。

(2006年02月05日 22時54分50秒)

Re:オペラ「オテロ」/梅(02/05)  
タケノノ さん
デル・モナコのオテロは本当に素晴らしいですね。「まさにこの「オテロ」を歌うために生まれてきた」と表現されたともさんの仰るとおりです。この「オテロ」をカラヤンと共演したことにも因縁を感じます。カラヤンと共演したのはこの「オテロ」だけだと思いましたが、この歴史的なセッションが実現したのもカルショウによるところがあるのでしょうかね?
モナコは日本でもオテロを歌い、当時のオペラファンを熱狂させたと聞いています。でもあの輝かしい第一幕の登場シーンとは裏腹に、舞台に出るまでは極度に緊張・萎縮していて、奥様にポンと後を押されてステージに立ったそうですね。とても信じられないエピソードです。 (2006年02月06日 16時42分51秒)

タケノノさん、ありがとうございます  
とも4768  さん
タケノノさん
>デル・モナコのオテロは本当に素晴らしいですね。「まさにこの「オテロ」を歌うために生まれてきた」と表現されたともさんの仰るとおりです。この「オテロ」をカラヤンと共演したことにも因縁を感じます。カラヤンと共演したのはこの「オテロ」だけだと思いましたが、この歴史的なセッションが実現したのもカルショウによるところがあるのでしょうかね?

カラヤンとテバルディは他に「アイーダ」がありますが、モナコとの共演はこの「オテロ」が1回あるだけですね。 当時のDECCAはカルショウ全盛時代で、カラヤンのウイーンとの蜜月時代もあって実現したとLP盤初出の解説に書いてあったと記憶しています。高校2年の12月に新譜としてリリースされたのを両親にねだって買ってもらったことが昨日のように思い出されます。

当時カルショウはすでにショルティとワーグナーの「指環」を録音しており、その優秀録音技術を「オテロ」に結集した形となったようです。

>モナコは日本でもオテロを歌い、当時のオペラファンを熱狂させたと聞いています。でもあの輝かしい第一幕の登場シーンとは裏腹に、舞台に出るまでは極度に緊張・萎縮していて、奥様にポンと後を押されてステージに立ったそうですね。とても信じられないエピソードです。
-----
もうオペラファン、モナコファンの間で有名なエピソードですね。このブログでも何度もモナコを書いていますが、このエピソードもそのたびに書いていました。舞台上のモナコとはまったく違うところがあって、非常におもしろい話ですね。

モナコのあと、ドミンゴの「オテロ」も聴いていますが、93年のチョン・ミュン・フンとのDG盤が好きな演奏で聴いています。チョンの指揮が色彩豊かで劇的で素晴らしいのです。
(2006年02月06日 17時04分35秒)

両親にすがって・・・  
タケノノ さん
> 高校2年の12月に新譜としてリリースされたのを両親にねだって買ってもらったことが昨日のように思い出されます。
それはスゴイですね。3枚組のレコードは価格も含め重みがあったのではないでしょうか?
私もこのレコードは中学3年の頃に親にすがって買ってもらいました。あの頃デッカのオペラが3枚だと7500円だったのが、4500円で限定発売されるとレコ芸に載り、この機会を逃すものかと親に頼み込んで買ってもらいました(確か定期テストで学年何位以内に入ったら買ってあげると、妙な契約を結びましたね)。
ただあまりに聴き込み過ぎてレコード盤が傷んでしまい、CD時代の到来とともに処分してしまいました。今では良い思い出です。 (2006年02月07日 23時11分46秒)

タケノノさん、ありがとうございます  
とも4768  さん
タケノノさん
>両親にすがって・・・
>> 高校2年の12月に新譜としてリリースされたのを両親にねだって買ってもらったことが昨日のように思い出されます。
>それはスゴイですね。3枚組のレコードは価格も含め重みがあったのではないでしょうか?
>私もこのレコードは中学3年の頃に親にすがって買ってもらいました。あの頃デッカのオペラが3枚だと7500円だったのが、4500円で限定発売されるとレコ芸に載り、この機会を逃すものかと親に頼み込んで買ってもらいました(確か定期テストで学年何位以内に入ったら買ってあげると、妙な契約を結びましたね)。
>ただあまりに聴き込み過ぎてレコード盤が傷んでしまい、CD時代の到来とともに処分してしまいました。今では良い思い出です。
-----
驚きました。まったく同じ経験なんですね。大学卒の初任給が1万円そこそこの時代でした。それで4500円は負担だったと思いますが、多分親父のボーナスで買ってくれたのだと思います。それも期末試験の成績如何によってという取り決めでした。

そのLPは今では知人のレコード棚に鎮座しています。おそらく聴いていないと思います。相当な傷みでしたから。 (2006年02月08日 01時16分34秒)

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