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November 11, 2015
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カテゴリ: 教授の読書日記
 大学院の授業でカナダのノーベル賞作家アリス・マンローの「夜」という短篇小説を読んでいる(=訳している)のですが、まだ途中ではあるものの、何だか気味の悪い話でね・・・。

 14歳の少女が主人公なんですが、この子が盲腸炎になるわけ。で手術をする。

 ところがお腹を開けてみると、盲腸もさることながら、腫瘍が見つかって、それも摘出することになったんですな。ただ、その腫瘍が良性だったか悪性だったかは不問に付されたまま。でも今も生きているので、多分、良性ではあったのでしょう。

 で、そんなことがあったために、その年の夏、彼女は学校もしばらく休み、家族からも特別扱いされるような日々が続くわけ。皆がそれとなく気遣っているようで、そのため返って彼女は軽い疎外感を感じてしまうところもある。

 ところで、彼女には9歳になる妹がいるんです。その妹というのは、どうやら彼女よりも美人なようで、気質も妹の方が家庭的、そして子どもらしい性格なんですな。

 で、そんなこともあってか、この姉妹の関係はいつもどことなくギクシャクしている。例えばある時など妹の顔にお母さんの化粧品を塗りたくり、蝋人形のような不気味なメーキャップにしてしまったこともあったとか。意識的にか無意識的にか、遊びにかこつけて妹の顔を台無しにしておきながら「とっても綺麗になったわ」とか言っておだてるとかね。それから、二段ベッドで寝ていて、下の妹の顔に唾を吐きかけるふりをしていじめたりもしたのだとか。とにかく、二人の仲は決定的に悪いわけではないのだけれど、姉は妹に対してちょっとこう、いじめてやりたいという思いを抱いているようなんです。

 そういう背景を踏まえての話ですが、結構大きな腫瘍があったという不安もあって、この年の夏、彼女は不眠症に陥るんですな。で、彼女は「眠れない夜の苦しみ」を生れて初めて味わうわけ。

 そしてそんな中、彼女はある奇妙な思いにとりつかれ出す。



 なんと、妹を絞め殺してみたい、という思いにとりつかれるのよ!

 先にも言った通り、彼女としては別に妹が特に嫌いだとか、憎いというわけでもなく、ただ、妹の首を締めたらどうなるかなあっていう思いにとりつかれてしまったというのですな。

 ま、今読んでいるのはそのあたりなので、この先どうなるか、本当に実行に移すかどうかは分かりませんが(もちろん、実行には移さないのでしょう)。


 で、この話を院生たちと読んでいて、私は思うわけですよ。何なんだ、これは? と。


 既に読み終わったマンローの作品も概してそうなんですけれども、女の子が思春期くらいの時に考えたこと、体験したことを、後になってから回想する、という体裁になっているのが多くて、なるほど、これがその時期の女の子の思いなのか、というのは確かに伝わってくる。

 でも、そうだとすると、その年頃の女の子なら誰でも、誰かに嫌な仕打ちを受け、そいつがめちゃくちゃ憎くなって殺してやりたい~と思ったとかいうホットで健全な殺意ではなく、これといった理由のない、静かな、興味本位の破壊衝動を、一度くらいは持ったことがあるっつーことなのか?

 その辺が、男にはイマイチ分からないのですけれども、ひょっとしたらそうかもしれないいやきっとそうだそうなんだおっそろしいなめちゃくちゃおっそろしいなあ、的な、うすら恐ろしい思いを抱かされるところなんだなあ。

 そういえばさ、日本でも『妊娠カレンダー』だっけ? 結婚して身重になったお姉さんに妹がちょっとずつ毒飲ましちゃう小説がありましたよね? 読んだことないけど。で、その世にもおっそろしい行為を静謐な文章で美しく綴っちゃうという小川洋子的世界がある。

 マンローの小説も、なんかそれと似たアレがあるんじゃないかなと。

 だとすると、ワタクシ的には苦手かな! 英語で読んでいるから、まだ我慢が出来るけれども、これ、日本人が日本語で書いた小説だったとしたら、読まないかも。そういう女性的(と言っていいのか?)感性、男の私には面倒臭すぎる。仮に男に破壊衝動があるとしたら、おそらくそれはもっと理屈っぽいんじゃないの? 三島の『金閣寺』みたいに。それなら、まあ、私にも理解できるし、共感すらできるけれども、マンロー的/小川洋子的「理由なき破壊衝動」は、はっきり言って鬱陶しいわ!

 私は、人間、額面通りに生きて欲しいわけ。怒っているなら怒っている、憎いなら憎い顔をしていてもらいたい。それなら、こちらにも相手が自分のことどう思っているか分かるから。そうじゃなくて、素知らぬ顔して、普通に付き合いながら、内面では「こいつの首、締めたらどうなるかな」とか、「ちょっとずつ毒飲ましてみようかな」とか考えていてもらいたくないのよ。









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Last updated  November 11, 2015 10:28:30 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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