教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

PR

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
June 9, 2018
XML
カテゴリ: 教授の読書日記
『ジェーン・フォンダのワークアウト』なる本を読了しましたので、心覚えを付けておきましょう。

 っていうか、今、若い人でジェーン・フォンダが誰か、知っている人の方が少なかったりするんだろうな。ま、一言で言って、アメリカの名優ヘンリー・フォンダの娘、そしてピーター・フォンダの姉。ピーター・フォンダって、『イージー・ライダー』で主役「キャプテン・アメリカ」を演じた俳優さんね。ジェーン本人も『コールガール』と『帰郷』でアカデミー主演女優賞2度も取っている女優さんです。ま、そうなんだけど、ジェーンの若気の至りと言いますか、その後アカデミー賞を獲るようになるとはとても思えない、セクシー路線での雄姿が見たい人は、カルトSF映画『バーバレラ』観てね! 

 さて、そんな芸能人一家に生まれたジェーン姐さんですが、名門ヴァッサー女子大で学び(中退)、一時期ファッション・モデルをやり、その後リー・ストラスバーグの下、NYのアクターズ・スタジオで演技を学ぶという典型的なエリート演劇人路線を突っ走っていたのに、なぜか『バーバレラ』で期せずしてセクシー女優にされちゃったんですけど、その後、映画界というよりはむしろ「ベトナム反戦運動」で名を挙げ、「ハノイ・ジェーン」の異名を取る。

 で、そういう社会改良運動をひとしきりやった後、次に話題になったのが、『ジェーン・フォンダのワークアウト』の出版。これ、アメリカでは1981年に出て、翌1982年にはそのビデオ版が出るのですが、このビデオがめちゃくちゃ売れた。それで一躍、健康運動方面の有名人になってしまうわけ。

 で、この『ワークアウト』の表紙には、ジェーン姐さんがシマシマのレオタードに黒いタイツ、そして足元にはレッグ・ウォーマーを身につけて写っているのですけど、この感じ、もろ1980年代って感じがします。

 ほれ、オリヴィア・ニュートン=ジョンの『フィジカル』っていう大ヒット曲覚えている? あれがジェーン姐さんの『ワークアウト』と同じ1981年の作ですよ。そして、1983年には映画『フラッシュダンス』が大ヒット。時代はレオタード、タイツ、レッグ・ウォーマーだったんですな。

 まあ、アレだね。公民権運動とかベトナム戦争とか、1960年代から1970年代にかけて全米に吹き荒れた一連の社会問題がひとまず収束した後、とりあえず社会改良するもんが無くなっちゃったんだろうね。それで、社会以外で何か改良するものはないかな?と見回したら、あらま、灯台下暗し、自分自身の身体がたるたるじゃないか! これ、改良するっきゃないでしょ、ということになったんでしょうな。ちなみに、ジム・フィックスが『The Complete Book of Running』を出してアメリカに空前のジョギング・ブームを巻き起こしたのが1977年。やっぱり大体、その頃であります。あと、エアロビクス・ブームも1980年代ね。

 とにかく、単に女優がワークアウトの本を出しました、というのではなくて、社会改革を目指す意識高めの活動家が、その次に選んだのが、自分の身体の改革であった、ということが重要なわけ。

 無論、その意味で、これは完全な自己啓発本、そして女性による女性のための自己啓発本であります。ライフスタイルから自分を変えよう、というわけですからね。



 それによると、やっぱりジェーン・フォンダも人の子、若い頃は自分の肉体的スタイルにコンプレックスがあり、また太ることへの恐怖というか自己嫌悪があって、例えば沢山食べてはトイレで吐き、また沢山食べるということを繰り返したり(このやり方、ローマ文明の最高潮の時にローマ人が編み出した乱チキ・パーティーのやり方なんだとか)、デキシドリンや利尿剤に食欲抑制の副作用があることに気付いて、そういうものをやたらに摂取したりしていたと。

 だけど後に夫となる社会活動家トム・ヘイドンとの出会いなどもあって、ベトナム戦争のことなどに関心を持つようになってみると、例えばサイゴンの女性達がアメリカに倣って美容整形をしている事実なども耳にするようになる。つまり、アメリカの文化がベトナム女性の在り方に多大な悪影響を及ぼしていることに気付くんですな。で、『バーバレラ』でハリウッドのセックスシンボルとなったジェーン本人が、まさにそうした悪影響の中心を担っていたということにも気づくようになる。これはジェーン本人としては、相当なショックだったらしい。

 で、そんな時、ジェーンは、ワークアウトというものに出会う。

 『チャイナ・シンドローム』の撮影中に足を骨折したんですが、そのすぐ後に『カリフォルニア・スウィート』という映画に出演することになっていて、骨折した足をなんとか短期間に元に戻さなければならなかった。それで専門家についてワークアウトのトレーニングを始めたところ、これが性に合っていたと。彼女は若い時からバレエを習っていて、その種の運動にはある程度慣れていたとはいえ、バレエ以上に彼女にはワークアウトが合った。

 さらにもう一つ、転機となったのは、30歳で妊娠し、子供を持ったこと。これがきっかけで、身体にいい物を食べたいという意識を持つようになった。で、そこで栄養の専門家のアドバイスを受けながら勉強してみると、従来の自分――というか、要するに普通のアメリカ人、という意味ですが――がいかに身体に悪いものばっかり食べているのかということに気付いて身震いするわけ。

 で、この二つのこと、つまり質の高い、また人工的な薬品に汚染されていない食物を適切な量食べ、ワークアウトで十分な運動をすることで、自分自身のエネルギーが高まり、若々しさが持続することに気付いたジェーンが、多くの人々にもこのことを教えてあげなきゃ!と思うのも当たり前でありまして(何せ、もともと社会改良家なんだから)、それで自分でワークアウトのスタジオを起ち上げつつ、この福音をもっと広く皆に伝えようとして書いたのが本書『ジェーン・フォンダのワークアウト』であり、またそのビデオ版であったと。

 で、ここまでが前置きでありまして、そこから「健康と美容のための食事プラン」だとか、「女性と強さ」というエッセイ(女性は本来「弱い性」なんかじゃないのに、そういう弱い性の方が男性に好まれるという理由で、なよなよしている方がいいと擦り込まれてきた。でも、今や女性本来の強さが美しさとして認識される時代が来ている、ってなことが綴られる)、さらにそれぞれ自分に合った運動の方法を選ぶべきだ、というような二、三のアドバイス的文章があった後、実際のワークアウトのやり方が豊富な写真と共に紹介されます。もちろん、この実際編が本書のメインであることは言うまでもありません。

 じゃあ、このワークアウトのレッスンが終ったところで本書も終るのかというと、そうではないんだなあ。そこはジェーン・フォンダですから、やっぱり最後に一言、アメリカ社会の在り方に文句の一つもつけたいわけですよ。

 かくして、「怖ろしい環境汚染」というタイトルの下、彼女が住んでいるロスやサンタモニカという街が、いかに大気汚染・水質汚染の害を蒙っているか、またファースト・フードの蔓延によって、如何にアメリカ人の食生活や職場環境の中に科学物質が取り込まれているか、といったことへの警鐘を鳴らす文章がくる。 

 しかし、たとえ社会環境がそうであったとしても、一人一人の女性がそういうことに気付き、意識的にそういうものを避け、出来る範囲で健康的なものを食べ、自分の身体を管理するようになれば、社会環境の方でそれに合わせざるを得なくなる(つまり皆がファースト・フード店に行かなくなれば、ファースト・フード店はつぶれるか、体質を変えざるを得なくなる)のであって、あなた自身が変われば、社会全体が変わるんだよと。まあ、そういうポジティブな言葉で、本書は締め括られます。

 ね。「自分が変われば、世界が変わる」。これはすべての自己啓発本に共通するテーゼでございまして、本書が自己啓発本であることは、こういうところからも窺われるわけですな。


 というわけで、ジェーン・フォンダのこの本、この時代の自己啓発本の一つの形として、また女性向け自己啓発本の一例として、私には勉強になるものでありました。さすがに私自身は、レオタードを着て、タイツ履いて、レッグ・ウォーマーつけてワークアウトするわけにはいきませんが、女性にはこの本の実践的な部分も参考になるのではないでしょうか。その意味でこの本、教授のおすすめ!と言っておきましょう。


【中古】ジェーン・フォンダのワークアウト (1982年)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  June 9, 2018 10:26:01 PM
コメント(2) | コメントを書く
[教授の読書日記] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: