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June 12, 2018
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カテゴリ: 教授の読書日記
ソニア・リュボミアスキー教授の書いた『人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法』(原題:The Myth of Hapiness, 2013)を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 ソニア・リュボミアスキーさんってのは、カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)の教授さん。私、一度だけUCRに行ったことがあるのですが、内陸にあって夏とか超暑いところ。気温50度くらいあるんじゃないかと思ったほど。あのクソ暑いところの先生なわけですな。1998年にマーティン・セリグマンが提唱して発足した「ポジティヴ心理学」系の人でございます。人間、幸福になるにはどうすればいいかってなことを考え続けている人ですから、方向性としては自己啓発系なんですけど、それを学問的に、サイエンスとして研究しているわけね。「幸福って何?」ということを追求したドキュメンタリー映画『Happy』にもちょい出演していて、トレーラーで一瞬、顔を見ることができます。

 で、この本でソニアさんがどういうことを言っているかと申しますと、人間、誰しも幸福になりたいと思っているわけだけれど、その幸福の追求の仕方が間違っておると。

 どう間違うかと言うと、幸福にまつわる様々な思い込み(教授の言葉で言えば「神話」)によって左右されてしまっていて、当初の目的に辿り着かないまま迷走している人が多すぎるというのですな。

 で、ソニアさんは人を迷走にさそい込む神話を10個、挙げております。それはどういうものかと言いますと・・・

1 理想の仕事に就けば、幸せになれる
2 貧乏だと幸せになれない
3 お金持ちになれば、幸せになれる
4 理想の人と結婚すれば、幸せになれる

6 子供がいれば、幸せになれる
7 パートナーがいないと、幸せになれない
8 検査結果が陽性だったら、幸せになれない
9 「夢がかなわない」とわかったら、幸せになれない
10 「人生で最良のとき」が過ぎたら、幸せになれない

 という10個。まあ、ざっと見ただけで、確かにこういう風に思っている人は多そうですよね・・・って、何だか他人事みたいな言い方ですけど、私自身は超ポジティヴなので、この10個のどれ一つとして、「私もそう思うところがある」という風にはならないの。得な性格。

 でも、私以外だと、そういう風に思っている人も多いことでしょう。で、ソニアさんは、そういう人たちに向って、「こんなのぜーんぶウソ、ウソ。だけど、そういう風に思い続けていると、本当にそうなっちゃうよ」と警鐘を鳴らすわけ。

 アレ? 信じることは実現するって、自己啓発本と同じこと言っちゃってますな・・・。

 まあ、それはともかく、上に挙げた1~10って、大抵の人は直観的にそう信じ込んでいる人が多いのだけれども、その直観はとりあえず間違っているので、その直観からまず一旦離れましょうと。そして、本当にそうなのかどうか、科学的に見直してみましょうと。本書でソニアさんが言いたいことは、一言でまとめればそういうことですな。で、以下、各章で上の1から10までの「神話」を検討し、その誤りを指摘し、その代りとして、正しい認識の仕方、すなわち、あなたを幸福へと導く考え方を提示すると。

 たとえば1の「理想の仕事に就けば、幸せになれる」ですが、確かに理想の仕事、今の仕事よりも条件のいい仕事に就けた瞬間は、人間誰しも幸福感・達成感を得ることが出来る。しかし、ここに「快楽順応」という落し穴があるんですな。

 つまり、どんな幸福、どんな達成感も、すぐに慣れちゃうのね、人間って。だからそういう幸福感・達成感って、ほんのわずかな時間しか続かず、また「もっといい仕事、もっと自分にあった仕事があるんじゃないか」という気持ちが湧いてきて、またぞろ不満の渦に巻き込まれてしまう。



 まず他人との比較を止めろと。そしてゴールの達成ではなく、そのゴールに向っているという実感こそを楽しめと。自分が本当にやりたいことを目標として設定し、そこへ向かって勤勉に努力しろと。そして、そのゴールに絶対到達する、ということを口に出して宣言しろと。

 まあ、それがソニア教授のおすすめ対処法でございます。

 ・・・っていうか、これって全部、自己啓発本に書いてあることじゃん? 

 で、本書全般に言えることなんだけど、ソニアさんは、すべて科学的な研究の成果を述べているわけなんですけど、最終的な結論を見ると、すべて自己啓発本が言っていることばかりという。そういう意味で、この本は、ある意味、自己啓発本の正当性を、科学的・学問的に裏付けた本、という風に言えるのではないかと。

 2の「お金についての神話」でも、学問的に研究すると、お金持ちの方が、そうでない人より幸福だ、ということはない、というのですな。むしろお金持ちであればあるほど、幸福感を抱いていないことが多い。じゃあ、どうすればいいかというと、お金を使う瞬間を楽しむのではなく、その瞬間に至るまでの過程を楽しむ(旅行当日ではなく、旅行を計画し、旅行を待ち望む時間を引き延ばす)とか、他人の幸福のためにお金を使う、等すれば、確実に幸福感が得られると。



 その他、「毎日10分か20分くらいの時間をかけて、将来の夢などを紙に書き出せ」とか、「その日に起ったポジティヴなことを書き出せ」とか、「瞑想しろ」とか、もう可笑しい位、自己啓発本っぽいことが色々書かれております。

 ソニア教授自身は、自己啓発本に対しては批判的で、曰く「自己啓発本のアドバイスは科学的な裏付けがないし、特定の目標(例えば「金持ちになる」とか)を達成することばかり書いてあるけど、そもそもその目標に本当に価値があるのか検討されていないし、目標の達成より過程が重要であることが書いてない」そうですけど、それにもかかわらず、この本と自己啓発本では、相違点より共通点の方がよほど多いと私は思います。

 要するに、ポジティヴ心理学ってのは、自己啓発本なんだよ。

 その他、本書を読んで、へえ、そうなんだと思ったことを羅列しますと、

○強い幸福感を一度抱くより、そこそこの幸福感を何度も抱く方が、全体としての幸福効果は高い。

○人生で手に入らなかったもののことを考え、諦めて、その地点からあらためて今、どうすれば自分は幸福になれるかを現実的に検討し、実行すると幸福になれる。

○失敗を後悔するより、やらなかったことを後悔する方がダメージが大きいので、何でもトライした方がいい。

○幸福感のピークは64・65歳、幸福経験のピークは79歳の時に生じる。若い頃というのは、実は最もネガティヴな時代である。

 ・・・ってな感じかな。

 あと、本書にはエマソンからの引用はないけれど、ウィリアム・ジェームズからの引用が結構あります。まあ、エマソンはエッセイストだけど、ウィリアム・ジェームズは心理学の大先達だからね。そういう敬意もあるのでしょう。

 先ほども言いましたように、本書は自己啓発本への批判を元に書かれているようでいて、結局はむしろ自己啓発本を学問的に裏付けるような感じになっておりますが、学問的な分、こちらのアドバイスの方がすんなり受け入れられるという人も多いことでありましょう。書かれていることに関して、私は何ら文句はないし、すべてその通りだと思いますので、興味のある方は是非。



リュボミアスキー教授の人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法 [ ソニア・リュボミアスキー ]


 ところで、私がこの本に興味を持ったのはですね、これが女性著者によるものだからですね。

 以前、女性向けの自己啓発本(もしくは女性が書く自己啓発本)って、上から目線のもの(こういう風にしろ、と指示するタイプのもの)ではなく、そういう自己啓発的なアドバイスを実際に実行してみたらこうなりました、という体験型のものが多い、とこのブログで述べたことがあるのですが、中には本書みたいに、上から目線のものもある、ということを知りたかったから。

 で、その場合、重要になってくるのは、その女性著者の肩書ね。

 ソニア・リュボミアスキーさんの場合、何と言っても「カリフォルニア大学リバーサイド校教授」という肩書がものを言う。つまり、しかるべき肩書きさえあれば、女性著者も上から目線の自己啓発本が書ける、と。

 で、私の実感から言いますと、最近、その手の本が増えております。有名大学の教授とか、大企業のCEOの地位を獲得した女性が、上から自己啓発を説く。

 これが、今という時代なんですな。





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Last updated  June 12, 2018 11:26:53 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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