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July 16, 2018
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カテゴリ: 思わず納得!
前にもこのブログに書きましたが、今年、私は初めて「英語科」の学生を教える機会を得まして、アメリカ文学を専門の学生に教えられるのだから、さぞ面白かろうと期待していたのですが、実際には学生さんたちの出来が良くなく、大分、期待外れになってしまったんですな。もう、授業中は怒ってばっかりだよ。「お前ら、この大学で一番、英語が読めると思われている学生じゃないか。それが、この程度なのか?! 恥を知れ、恥を!!」ってな感じで。

 でも、やっぱり英語科の学生を教えているのだから、一般教養の英語の授業みたいに、テキストを読むだけでおしまい、というわけにも行かないだろうなと。

 ということで、期末考査には、筆記試験に加えてレポートも課すことにし、授業中に読んだヘミングウェイの作品について、論文みたいなものを書いてきやがれと命じたわけ。

 しかし、学生の出来からすると、そのように命じただけでは、おそらく、お粗末なものしか書いてこないだろうなと。

 そこで、ここ数回、授業の終りの20分位を使って「文学論文の書き方」的なことを講じたわけよ。

 で、学生の出来が悪いことはよーく分かっていたので、この出来の悪い学生にも分かる言葉で、文学作品を論じるってことは、具体的には何をすることなのか、説明したと。

 で、まず初日は、「文学作品を論じるに当たって必要なもの」を、選択肢つきで説明したんです。

 つまり、まず文学作品を論じるとなれば、論じる作品が必要であると。しかもその場合、一つの作品を単体で論じるか、複数の作品を論じるかの選択肢があり、さらに複数の作品を論じるのであれば、同じ作者による作品を複数論じるか、別な作家による複数の作品を論じるかの選択肢がある。だから、これらの選択肢の中から、どれかを選択しろと。

 分かり易!



 分かり易!

 次に必要なものは、作品の「筋書き説明」。論文の読者は、必ずしも自分が論じようと思っている作品を読んでいるとは限らないので、当該作品がどういう筋書きなのかを説明する必要がある。それなしで論じるのは、独りよがりの論文にしかならないので、これをするかしないかの選択肢はない。しろ。

 分かり易!

 次に必要なものは、「視点」。文学研究は当該作品が「面白かった」か「面白くなかった」かを判定するものではない。それを決めるのは文学評論。文学研究たるものは、論者がある特定の「視点」を設定し、その視点から当該作品を眺めた時に何が言えるかを考えるもの。「視点」があるかないかの選択肢はないので、決めろ。

 分かり易!

 ここまでが初日ね。で、次の回では、作品の論じ方の選択肢を提示しました。

 文学作品を「論じる」というのは、具体的には何をすることかと言えば、簡潔に言えば、当該作品の「下部構造」を明らかにすること。前回に述べたある「視点」から見れば、ある作品について、表面的には見えないけれども、ある構造があることが明らかになる。この構造を掘り起こして提示すること、これが文学作品を「論じる」ことに他ならない。

 ただし、その場合、二つの選択肢があって、当該作品をそれ自体、単体として分析すること。これがいわゆる「新批評的アプローチ」。この場合、精読に基づいた「シンボルハンティング」が重要な役割を果す。例えば「自然」という視点を用いてヘミングウェイの作品を分析した場合、作品の登場人物の中で誰が一番自然に近しいか、誰が一番自然と遠いか、といったことを判断し、「自然に最も近しい登場人物が、最も影響力のある登場人物である」というような下部構造を明らかにすることができるかも知れない。そして、例えば「木」を「自然」全体のシンボルと見做した場合、誰が森に居るのか、誰が木に寄りかかっているのか、といったことが、「自然に近しいか、遠いか」を判断する上での判断材料になりえる。

 もう一つの選択肢は「新歴史主義批評的アプローチ」。当該作品をそれが書かれた時代に戻した上で考察すると、当時の状況を知らない現代の読者が見落としてしまうような下部構造が見えてくることがある。その下部構造を明らかにするのが、このアプローチの目標。

 だから、作品を論じるとなれば、上記2種類のアプローチのどちらを選ぶかという選択肢の中から選ばなければならない。ただし、現代では論文の手法として前者はやや古く、後者の方が歓迎される傾向にあることを承知しておかなければならない。

 分かり易!



 「先行研究」のない論文がないように、「注」のついてない論文もない。ではどういう時に注を付けるのか。

 この場合の選択肢は二つ。先行研究を提示した場合などにつける「出典」の明記と、本文中で十分に論じられなかったことについての「補足説明」。だから、「出典」と「補足説明」を注の中で行え。

 分かり易!

 どう? 気合抜け抜けで説明している割に、超分かりやすくない? 気合抜け抜けで説明したのが逆に良かったのか・・・。相手の出来がよろしくないので、まさに「サルにも分かる論文講座」みたいになったのが奏功したのかもね。

 で、次回、最終回では、論文を書くコツとして二つのこと、すなわち「フローチャートを作る」ということと、「自分が論じたいと思っていることを他人に口頭で説明すると、論旨が整う」ということについて説明しようかなと。






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Last updated  July 16, 2018 11:38:06 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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