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2006.11.02

西澤保彦の本格推理小説だ。そういうフレコミの作品は以前もあったけど，この作品は，設定も文体も固めで，作者の意気込みが伝わってくる感じだった。

○ストーリー
名門女子高の生徒が，絞殺死体で発見された。そうして数日後，別の生徒が同じ手口で殺された。懸命に捜査をする警察，注意を呼びかける学校をあざ笑うかのように，犯人は犯行を続ける。事件を追う刑事は，人々の悪意に翻弄されながら，少しずつ真相に近付いていく。被害者たちをつなぐミッシングリンクとは？連続殺人の隠された動機とは？

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冒頭に書いたように，ハチャメチャSFミステリー，あるいは酒飲みロジックパズラーの作風で知られる西澤保彦が，気合を入れて書き上げた，という雰囲気の本格ミステリーだ。まあ，フツーの小説では当たり前なんだろうけど，少しもオチャラケのシーンがないのにビックリする。

西澤保彦自身も，時々「どうして自分がハチャメチャSFミステリーを書いているんだろう？」みたいなことを，あとがきでフシギがっていた。だからこの作品は，彼が本当に書いてみたかった，エラリー・クイーンばりのミステリーなんだと思う。

作品の主人公は中年の刑事とその仲間だし，彼らが捜査を続ける中で出会う人々は，そろいもそろって，現代的な自己中心的な人格ばかりだし，一方で被害者の女子高生たちも性格が歪んでいるし，と，読んでいて，なかなかツライ作品だ。これまで，ギャグや会話文でインパクトを薄めていた，”人の悪意”というテーマが，むき出しでぶつけられている印象で，少しコワイ。

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実は，女子高生連続殺人事件と平行して，別の連続殺人が起きている。おかげで，作品の中で進行する10日間あまりの間に，ほぼ毎日人が殺される，という展開になっている。これは現代社会の人々の考え方の異常性・幼稚性を描く分には効果があるが，ここまで派手な展開となると，リアリティを大きく損なっているような気がする。

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もう1つの不満は，西澤保彦の（逆）男女差別だ。女子高の教師だったという経験を元に，彼女たちの残虐性，女子高教師のつらさを描いているが，そうした状況が起きてしまうことに対して「女性だけで，集団で，子どもだから」という説明がつけてある。逆に言えば，一人一人はフツーの人格の持ち主なワケだ。

ところが一方の男性たちは，これまでの西澤作品と同じように，一人一人が未熟で，幼児性があり，支配欲が強く，暴力的だ。うなづける部分はあるんだけど，ちょっとステロタイプじゃないのかなあ？

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と，イロイロ書いてしまったけど，ミステリーとしてはなかなかロジックに整合性が高い秀作だ。2つ目の事件は，目くらましのために付け加えている可能性もあるので，そういう意味では，西澤保彦の作戦に引っかかっているのかも知れないな，自分。

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