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2010.03.30
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カテゴリ: びしびし本格推理
石持浅海の第3作目を読んだ。

○ストーリー
東京湾岸の羽田国際水族館は,施設は中規模だが職員の創意工夫で人気のスポットとなっていた。だがある日,複数の体験型水槽に異物が仕掛けられ,館長宛てに脅迫メールが届く。だが職員たちは,攻撃が仕掛けられた水槽から3年前に起きたある事件を思い出し,戦慄をするのだった。そしてついに・・・

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物語の3年前にある事件と不審死が起きており,それをなぞるかのようにテロと脅迫が起きる。読者や登場人物には3年前の事件の真相も明かされておらず,読み進んで行くと両方の謎が解かれていくことになる。

1作目の小さいホテルで起きた殺人事件,2作目のハイジャックされた旅客機内での殺人事件,と比べると,この作品での事件の方が,謎が過去とも関連しており,ずっと立体的に深みがあるような印象を受けた。

また事件とは少し別に,水族館の運命についての驚きの展開があり,「美しい謎」というキャッチコピーに恥じない作品に仕上がっている。

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これまでの2作で感じられた2つの欠点は解消されている。



探偵役を担う男性は,3年前の時点からこの水族館の職員たちとも知り合いで,いくつかのプロジェクトを一緒に行った優秀な人物となっている。これまでの2作のように,たまたま居合わせた若者,という設定とは異なり,事件を解決するには最も適した人物としてナットクがしやすい設定となっている。

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一方で,ミステリーのロジックを優先するゆえの強引過ぎる展開は今回も目立つ。不気味過ぎるほど事件の背景を理解してしまう探偵,妙に素直に犯人や探偵の指示に従う登場人物,事件に巻き込まれて死んでしまう人の命への驚くほどの軽視。

この辺りはバランスが難しいところで,文学作品ではなくミステリーを読んでいるのだから,多少の”お約束”を受け入れるのは当然だ。だから本来,職員がパニックを起こして,互いに責め合っていてもおかしくないのに,冷静に探偵の指示に従う。また多くの目があったのに,肝心の殺人の瞬間は誰もそのエリアを見張っていなかった。

石持浅海は,上品な作風と強引なロジックの2つの面が持ち味のようなので,こうした展開にはある程度目をつむるべきなのだろう。

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ただしミステリーとは別に,探偵役だけが人智を超えたスピードで,全てを理解する,という毎度の展開には,さすがにヘキエキした。今回の探偵もマルチな才能を発揮する。仕事もでき,事件を解決し,仲間も勇気付け,犯人を諭し,水族館の将来のプランも立て,と何でも1人でやってしまう。

ミステリーのロジックの造りこみに強引さはあってもいいと思うのだけど,探偵の思考の過程にはある程度ナットクするスピードであるべきだと思う。そんなヘンなところで不自然さを発揮する必然性は低いと思う。

あまりにも作品同士のカラーが近いので,少し他の作品を読んでから,石持作品に戻ることにする。








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Last updated  2010.03.31 00:18:45
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