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2011.02.21
テーマ： 最近、読んだ本を教えて！(24305)
カテゴリ： がちがちハードボイルド
逢坂剛の初期の短編集を読んだ。
○ストーリー
現代調査研究所の岡坂神策は，スペインのコリアという町に多く残るハポンという名前の人々の出自を探る依頼を受ける。どうやら江戸時代初期に伊達藩からローマを目指した支倉常長の一行が，この町に滞在したらしいことが分かる。だが，その調査の一環で，岡坂は奇妙なことに気付く。
－－－－－－－－－－－
逢坂剛の初期作品のシリーズ主人公・岡坂神策が登場する短編集だ。作品は全て東京が舞台となっているが，このシリーズ（と言うより逢坂剛）の持ち味として，スペインあるいは南米が，物語に関わってくる。
例によって逢坂剛のスペイン現代史の研究成果が，物語の形を利用していくつか披露されている。読者としては，「またか」と思うネタもあるが，内容も興味深いし，こうした形式での発表もありかな？と思ってしまう。
ひょっとしたらスペイン現代史の研究家からすると，「立場を利用して生半可な発表をして」という批判があるのかも知れない。でもスペインへの情熱と，研究とロマンを結びつける手腕で，一般の読者に難しいテーマを語って聞かせる手腕は優れているので，功績は大きいと思う。
－－－－－－－－－－－
さて，この頃の逢坂剛の作品では，これが唯一のシリーズに近かったこともあり，主人公・岡坂神策は驚くほど多くの事件に巻き込まれる。
そうした状況を考慮し，文献調査などを行うはずの岡坂が，毎回のように殺人に関わる不自然さを割り引いて考えないといけない。つまり，本来はいろんなシリーズの作品に割り当てられるべきネタが，この頃抱えていたシリーズが，この1つだけだったので，全て岡坂神策の元に集まってしまった，ということだろう。
逢坂剛は，長編になるとやたらと長くなる傾向があるので，短編集でスペイン情緒も味わえるというのは，なかなかオトクな作品だと思う。
－－－－－－－－－－－
各編について簡単に述べる。
「緑の家の女」：契約した本人が家族で住むことが条件となっている高級マンションで，ある女性がいかがわしい商売を営んでいるらしい。その証拠をつかみ，契約を解除するために，岡坂は契約者の男性と面会をしたが・・・スペイン内戦時代，現地に赴いたハリウッド俳優・エロール・フリンについてのウンチクが語られる。それ以外は，珍しく興信所っぽい，ジメジメした調査内容でやや落胆だ。
「消えた頭文字」：離婚した父親と暮らしている娘の居場所を知りたい。ありふれた親権にまつわる調査のはずだった仕事は，複数の外人男性が岡坂と張り合う事件へと変わっていった。・・・依頼者の女性・田倉いづみって，どんなイメージなんだろう？松阪慶子とかかな？（古っ！）。バー「森の老女」の店名の謎解きは良かった。
「首」：岡坂の得意先の広告会社の女性キャリアウーマンは，ひどい頭痛や肩こりに悩まされていた。精神科クリニックに通い，抱えている秘密を語るように言われた彼女が明かした事実とは？・・・前の短編同様に迫力のある女性依頼者だ。逢坂剛の興味の1つである脳神経の不思議がテーマの1つになっている。
「ハポン追跡」：スペインのある町に残る”ハポン一族”。彼らの祖先，あるいは名前の由来は，支倉常長の一行なのか？それを探る岡坂に，テロリストが迫る。・・・スペイン研究ネタが抜群に面白い。反面，サスペンス部分の比重は小さくて，あまり重要じゃない気がする。
「血の報酬」：南米の小国・ヌエバスコから独裁者の総統が来日した。総統が宿泊しているはずの迎賓館の裏手を通りかかったため，岡坂と桂本は，外交問題となる事件に巻き込まれる。・・・かなり唐突な印象がある冒険物語だ。映画にしたらいいかも知れない。結末もヒネリが効いている。
○ストーリー
現代調査研究所の岡坂神策は，スペインのコリアという町に多く残るハポンという名前の人々の出自を探る依頼を受ける。どうやら江戸時代初期に伊達藩からローマを目指した支倉常長の一行が，この町に滞在したらしいことが分かる。だが，その調査の一環で，岡坂は奇妙なことに気付く。
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逢坂剛の初期作品のシリーズ主人公・岡坂神策が登場する短編集だ。作品は全て東京が舞台となっているが，このシリーズ（と言うより逢坂剛）の持ち味として，スペインあるいは南米が，物語に関わってくる。
例によって逢坂剛のスペイン現代史の研究成果が，物語の形を利用していくつか披露されている。読者としては，「またか」と思うネタもあるが，内容も興味深いし，こうした形式での発表もありかな？と思ってしまう。
ひょっとしたらスペイン現代史の研究家からすると，「立場を利用して生半可な発表をして」という批判があるのかも知れない。でもスペインへの情熱と，研究とロマンを結びつける手腕で，一般の読者に難しいテーマを語って聞かせる手腕は優れているので，功績は大きいと思う。
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さて，この頃の逢坂剛の作品では，これが唯一のシリーズに近かったこともあり，主人公・岡坂神策は驚くほど多くの事件に巻き込まれる。
そうした状況を考慮し，文献調査などを行うはずの岡坂が，毎回のように殺人に関わる不自然さを割り引いて考えないといけない。つまり，本来はいろんなシリーズの作品に割り当てられるべきネタが，この頃抱えていたシリーズが，この1つだけだったので，全て岡坂神策の元に集まってしまった，ということだろう。
逢坂剛は，長編になるとやたらと長くなる傾向があるので，短編集でスペイン情緒も味わえるというのは，なかなかオトクな作品だと思う。
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各編について簡単に述べる。
「緑の家の女」：契約した本人が家族で住むことが条件となっている高級マンションで，ある女性がいかがわしい商売を営んでいるらしい。その証拠をつかみ，契約を解除するために，岡坂は契約者の男性と面会をしたが・・・スペイン内戦時代，現地に赴いたハリウッド俳優・エロール・フリンについてのウンチクが語られる。それ以外は，珍しく興信所っぽい，ジメジメした調査内容でやや落胆だ。
「消えた頭文字」：離婚した父親と暮らしている娘の居場所を知りたい。ありふれた親権にまつわる調査のはずだった仕事は，複数の外人男性が岡坂と張り合う事件へと変わっていった。・・・依頼者の女性・田倉いづみって，どんなイメージなんだろう？松阪慶子とかかな？（古っ！）。バー「森の老女」の店名の謎解きは良かった。
「首」：岡坂の得意先の広告会社の女性キャリアウーマンは，ひどい頭痛や肩こりに悩まされていた。精神科クリニックに通い，抱えている秘密を語るように言われた彼女が明かした事実とは？・・・前の短編同様に迫力のある女性依頼者だ。逢坂剛の興味の1つである脳神経の不思議がテーマの1つになっている。
「ハポン追跡」：スペインのある町に残る”ハポン一族”。彼らの祖先，あるいは名前の由来は，支倉常長の一行なのか？それを探る岡坂に，テロリストが迫る。・・・スペイン研究ネタが抜群に面白い。反面，サスペンス部分の比重は小さくて，あまり重要じゃない気がする。
「血の報酬」：南米の小国・ヌエバスコから独裁者の総統が来日した。総統が宿泊しているはずの迎賓館の裏手を通りかかったため，岡坂と桂本は，外交問題となる事件に巻き込まれる。・・・かなり唐突な印象がある冒険物語だ。映画にしたらいいかも知れない。結末もヒネリが効いている。
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