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2011.10.06
テーマ： 最近、読んだ本を教えて！(24303)
カテゴリ： びしびし本格推理
「硝子のハンマー」「狐火の家」に続く，〈榎本＆青砥シリーズ〉の最新3作目を読んだ。
○ストーリー
会社社長の大石が別荘で死亡していた。遺体は2重3重に施錠されていた部屋の中で発見されたため，重い病気だった大石が，自らの命を絶ったと思われた。だが残された遺書に不審な点を感じた司法書士の日下部は，弁護士の青砥純子と防犯コンサルタントの榎本の2人を，別荘に呼び寄せた。そこで明らかになった真実とは？
－－－－－－－－－－－－－
これは貴志祐介の唯一のシリーズの3作目だ。題名の通り，鍵のかかった部屋＝ロックド・ルーム＝密室がテーマとなっている。
基本的な展開としては，事件が発生し，その状況がいわゆる「密室」となっているために，そうした事件に詳しいとされている弁護士の青砥純子に相談が来て，彼女は，防犯コンサルタントの榎本を呼ぶ，という流れだ。
榎本は，情報ネットワークにおけるセキュリティ設計とハッカーの関係のように，防犯システムに詳しいだけでなく，窃盗犯である可能性があるなど経歴が謎めいている。
青砥純子は，榎本のなりわいにを疑いを抱きつつも，ひんぱんに彼と行動を共にするようになる。
－－－－－－－－－－－－－
こうした理由で，「新本格ミステリームーブメント」の中でも，アリバイトリック，大型仕掛けトリックは多くあるが，リアルな〈密室殺人モノ〉はあまり読めない気がする。
だからむしろ「3分間ミステリー」など，パズル的な読み物で，〈密室殺人モノ〉は生き残っていると思う。
だが，貴志祐介は防犯コンサルタントという登場人物を設定することで，このジャンルを復活させた。
短編集の中で，密室の状況説明と，それを解いていく過程が語られるので，どうしても小説としての奥行きと言ったものは薄い。貴志祐介の長編は，重厚な世界観がガッチリと描かれていて，その中で主人公たちが生き残るために知恵を絞る，というパターンが多い。それと比べれば，はるかに軽い内容だ。
けれどもどこまでもきちんと考察し，犯人と主人公が知性で勝負する，という意味では，これも間違いなく貴志祐介作品だ。
－－－－－－－－－－－－－
各編について簡単に感想を述べる。
「佇む男」：別荘の部屋に閉じこもって死んでいた社長。だが遺体は扉の前に座った状態で発見されたため，自殺と認定された。どうしても納得の出来ない関係者は，密室事件の専門家を呼ぶ・・・いきなりレベルの高い密室トリックだ。驚愕の真相は読んでもらいたい。これを考える犯人，というか作者って・・・
「鍵のかかった部屋」：5年ぶりに甥と姪のいる家を訪問した愛一郎が発見したのは，自分の部屋で練炭自殺をしている甥の姿だった。どう考えても怪しい甥の義父のトリックを破るのは？・・・「青の炎」「硝子のハンマー」「悪の教典」のいろいろな要素を思わせる雰囲気を持つ短編だ。2重3重になっている密室トリックはもう芸術の域だ。『密室』という題名からも，作者の自信の程が分かる。
「歪んだ箱」：杉崎は新婚生活を送るための新居を建てた。だが出来上がったのはとんでもない欠陥住宅だった。そして「扉の開かない」欠陥住宅の中で，工務店の社長の死体が発見される。・・・4編の中でただ1つ，犯人側の視点から語られる「コロンボ風」の短編だ。ただこのトリックはさすがに無いなあ。
「密室劇場」：前衛劇団の舞台の上演中に，楽屋の中で出演者が撲殺された。楽屋からの出口は，舞台の上だけだったのだが・・・他と毛色が違う。まず同じ〈密室モノ〉でも，物理的拘束がゆるく，論理的密室とでも言うものだ。次に，登場人物が多い。さらに，ガチャガチャしている。・・・これは巻末じゃない方が良かったのでは？
○ストーリー
会社社長の大石が別荘で死亡していた。遺体は2重3重に施錠されていた部屋の中で発見されたため，重い病気だった大石が，自らの命を絶ったと思われた。だが残された遺書に不審な点を感じた司法書士の日下部は，弁護士の青砥純子と防犯コンサルタントの榎本の2人を，別荘に呼び寄せた。そこで明らかになった真実とは？
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これは貴志祐介の唯一のシリーズの3作目だ。題名の通り，鍵のかかった部屋＝ロックド・ルーム＝密室がテーマとなっている。
基本的な展開としては，事件が発生し，その状況がいわゆる「密室」となっているために，そうした事件に詳しいとされている弁護士の青砥純子に相談が来て，彼女は，防犯コンサルタントの榎本を呼ぶ，という流れだ。
榎本は，情報ネットワークにおけるセキュリティ設計とハッカーの関係のように，防犯システムに詳しいだけでなく，窃盗犯である可能性があるなど経歴が謎めいている。
青砥純子は，榎本のなりわいにを疑いを抱きつつも，ひんぱんに彼と行動を共にするようになる。
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こうした理由で，「新本格ミステリームーブメント」の中でも，アリバイトリック，大型仕掛けトリックは多くあるが，リアルな〈密室殺人モノ〉はあまり読めない気がする。
だからむしろ「3分間ミステリー」など，パズル的な読み物で，〈密室殺人モノ〉は生き残っていると思う。
だが，貴志祐介は防犯コンサルタントという登場人物を設定することで，このジャンルを復活させた。
短編集の中で，密室の状況説明と，それを解いていく過程が語られるので，どうしても小説としての奥行きと言ったものは薄い。貴志祐介の長編は，重厚な世界観がガッチリと描かれていて，その中で主人公たちが生き残るために知恵を絞る，というパターンが多い。それと比べれば，はるかに軽い内容だ。
けれどもどこまでもきちんと考察し，犯人と主人公が知性で勝負する，という意味では，これも間違いなく貴志祐介作品だ。
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各編について簡単に感想を述べる。
「佇む男」：別荘の部屋に閉じこもって死んでいた社長。だが遺体は扉の前に座った状態で発見されたため，自殺と認定された。どうしても納得の出来ない関係者は，密室事件の専門家を呼ぶ・・・いきなりレベルの高い密室トリックだ。驚愕の真相は読んでもらいたい。これを考える犯人，というか作者って・・・
「鍵のかかった部屋」：5年ぶりに甥と姪のいる家を訪問した愛一郎が発見したのは，自分の部屋で練炭自殺をしている甥の姿だった。どう考えても怪しい甥の義父のトリックを破るのは？・・・「青の炎」「硝子のハンマー」「悪の教典」のいろいろな要素を思わせる雰囲気を持つ短編だ。2重3重になっている密室トリックはもう芸術の域だ。『密室』という題名からも，作者の自信の程が分かる。
「歪んだ箱」：杉崎は新婚生活を送るための新居を建てた。だが出来上がったのはとんでもない欠陥住宅だった。そして「扉の開かない」欠陥住宅の中で，工務店の社長の死体が発見される。・・・4編の中でただ1つ，犯人側の視点から語られる「コロンボ風」の短編だ。ただこのトリックはさすがに無いなあ。
「密室劇場」：前衛劇団の舞台の上演中に，楽屋の中で出演者が撲殺された。楽屋からの出口は，舞台の上だけだったのだが・・・他と毛色が違う。まず同じ〈密室モノ〉でも，物理的拘束がゆるく，論理的密室とでも言うものだ。次に，登場人物が多い。さらに，ガチャガチャしている。・・・これは巻末じゃない方が良かったのでは？
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