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カテゴリ: 映画の話
映画の冒頭、浅草演芸ホールの入口が大写しになった瞬間に
「わぁ、久しぶり」
と思いました。
でもよく考えたら、実際にはホンの数回、前を通り過ぎたことがあるだけの場所。

それなのに、思わず懐かしさがこみあげてしまったのは、大好きだったクドカンのドラマ「 タイガー&ドラゴン 」で、いつも登場する情景だったからです。

ドラマが理由のすべてではないでしょうが、ここ数年落語ブームが続いているのだといいます。
私もご多分にもれず、落語ってすごいな、いつか寄席に行ってみたいな…と興味津々なのですが、いまだに実現できていません。

そんなわけで、噺家さんが主人公のこの映画の評判も、ずっと気になっていた次第です。


(そういえば、「タイガー&ドラゴン」主演の長瀬くんとはTOKIOつながり)
彼の下に、ふとしたきっかけから、落語を習いに三人の男女が集まってきて、さて…という物語。



それぞれ「話下手、口べたな自分」「周囲とうまくコミュニケーションできない自分」を何とかしなければ、という思いで三つ葉の下を訪れます。

その不器用さたるやまったく痛々しいほどで、その気がなくても「怒ってるの?」と言われてしまう、香里奈と松重豊の顔相ははまり役!(実生活でもそう言われていそう…)

その上、当の三つ葉本人が、「口は災いの元」を地で行く短気なガンコ者。
落語は大好き。私生活でも和服を着て古典しかやらないと決めている。でもそれが結果に結びつかない。
まさに「あがき」と「焦り」の真っただ中。
本当なら、人の面倒なんて見ている余裕はないのです。

そんな、師匠も弟子も手探り状態で「でも、進まなきゃ」と一歩を踏み出していく物語が、多くの人の心をつかんでいるのかな、という気がしました。

実のところは、落語を一本覚えたからって、人間の性分がそうそう簡単に変わるものでもない。
そのあたりのことも、きれいごとのサクセスストーリーにはしないで、ちゃんと描き出しているところに好感のもてる作品でした。



(以下、ネタバレご注意!)

映画のモチーフとして、三人のにわか弟子たちの行く末とは別に、主人公の三つ葉自身の成長というストーリーも大きいのですが、国分くんを本当に見直しました。

師匠の十八番である「火焔太鼓」に挑戦し、一門会で披露する…
先に、伊東四朗演じる師匠の舞台をじっくり見せ、稽古をつけてもらいながら必死に練習する姿を見せ(必死なんだけど全然ダメなところも見せ…)

丁寧な伏線がはられて、いかに、三つ葉が本番の舞台で大化けしてみせたか、落語に精通しているとは言えない私にもひしひしと伝わってきました。


落語の魅力のある側面を、この映画を観たことでとてもクリアに理解することができました。もちろん、それはほんの一部分のことなのでしょうが…

中盤のクライマックスであるこの舞台のシーンがあまりにもよかったので、 そこから先の数十分がすべて蛇足にしか見えない というのが、皮肉な結果を生んでいる…それが率直な感想です。

【原作の方を読んでみたくなりました。】






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最終更新日  2007.08.07 11:13:07
コメント(6) | コメントを書く


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中盤がよかった?  
中盤がそんなによかったのですか?「クイーン」を見に行ったときに、予告編をやっていたので気になっていました。
しゃべれるようになることが人間を変えるか?確かに、落語一本覚えたからって、人間の本性が簡単には変わらないでしょう。それでも人前でしゃべる(それも落語を演じる)ことを一度でもクリアすると、変わるきっかけをつかみやすいかな。 (2007.08.07 21:52:59)

火焔太鼓  
まろ0301  さん
 高座での火焔太鼓のシーン、あれは良かったですね。ただ、あそこで切ってしまうと、「後は皆さまのご想像にお任せいたします」ということになり、チビと美人と元野球選手はどうなるのだ!第一、三つ葉とあの娘とはどうなるんだよ!と暴動が起こるかもしれません。
 ラストで、「ほーら、思ってた通りになったよ」と、確認して、気持ちよく席を立つ・・という客への配慮のように思います。
 古典落語、特に「火焔太鼓」のようなよく知られた作品は、話の展開から何からかにまで頭に入っていて、次にこう来ると分かっていて、なおかつおかしいのですよね。
 「寅さん」なんかもそうですね。
 私も、原作を読んでみたくなりました。

 そして、寄席に足を運ばれる事をお薦めいたします。 (2007.08.08 13:52:29)

Re:中盤がよかった?(08/07)  
サリィ斉藤  さん
935うさちゃんさん

>それでも人前でしゃべる(それも落語を演じる)ことを一度でもクリアすると、変わるきっかけをつかみやすいかな。

性分や得手不得手を根底から変えるような人格改造はなかなか難しいことだと思います・・・が、大事なのは、この映画のセリフにもあるのですが「何とかしなきゃって思う」という、その前向きな姿勢なのでしょうね。
人が変わって別人になるのではなく、その人本来も持ち味をそのままに「成長する」。そういうさわやかな姿を見られた映画でした。 (2007.08.08 19:18:45)

Re:火焔太鼓(08/07)  
サリィ斉藤  さん
まろ0301さん

> ただ、あそこで切ってしまうと、「後は皆さまのご想像にお任せいたします」ということになり、チビと美人と元野球選手はどうなるのだ!第一、三つ葉とあの娘とはどうなるんだよ!と暴動が起こるかもしれません。

そうなんですよね(笑)
娘の高座~ラストシーンに持って行きたい意図はわかるのですけど、弟子の発表会の後で三つ葉の火焔太鼓、にすればよかったのにね、なんて夫と偉そうに話しながら映画館を出ました。(恐らく、原作に忠実なんでしょうね)

あの高座のシーンは一席丸ごと長回しで一発撮りしたと聞いて、ますます国分くんを見直しました。寄席、行きたいです。いつの日か。 (2007.08.08 19:22:23)

原作、おすすめです  
1go1ex さん
私は小説のほうを先に読みました。
人物の一人一人が奥行き深く描かれていて、とても味わい深い小説ですよ。
読み始めると止まらなくなって、一気に最後まで読んでしまいます。
映画は、小説に比べると少し物足りなく感じてしまいました。
文字の世界と映像の世界と、伝え方が違うんですね。 (2007.08.12 22:50:02)

Re:原作、おすすめです(08/07)  
サリィ斉藤  さん
1go1exさん

>私は小説のほうを先に読みました。
>人物の一人一人が奥行き深く描かれていて、とても味わい深い小説ですよ。

佐藤多佳子さん、未読の作家なんですが、最近とても話題の方ですよね。
おすすめありがとうございます。じっくりと読んでみたいです。
原作モノの映画って、先に本を読んでしまうと、どうも違和感というか、物足りなさが先に立つことが多いですよね。 (2007.08.18 22:35:17)

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