竜胆輪道 (りんどうりんどう)

竜胆輪道 (りんどうりんどう)

February 28, 2008
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テーマ: お勧めの本(7897)
カテゴリ:
身体感覚を呼び起こされる描写の巧みさが、全編にわたって出ていて、

谷崎=耽美

という印象が、ミステリー(ただのミステリーとはずいぶん違うと思いますが・・)でも味わえます。


四編を収録


「柳湯の事件」
主人公の幻想で、現実と妄想の境がなくなっていく様子。舞台が湯屋なのも効果的か

上手い料理評(小泉武夫の文章はよだれが出る!)は、触感や、においを思い起こさせるが、ここで書かれているのも気持ち悪さが・・





「途上」
主人公が探偵に呼び止められ、「ある人を調査しているが、それはあなただ」、という切り口は鮮やか。



解説にある、谷崎自身の意図に思いっきり乗せられました。



「私」
学生寮で盗難が起き、寮生が犯人ではないかという、よくある設定

下がり藤の紋付きが怪しいと言われ、それから紋付きを着るべきか、着ないのもおかしいし、と


犯人と疑われる主人公の心の動きの書き方は、神経質というか、このように書くかというか

人の心の中へ分け入っていくような感覚

映画などでは表現できない、これこそが小説の面白さだなと思わせ読ませる作品

後味は少し苦いでしょうか。


『「今私が置かれているような場合において、真の犯人と然らざる者とは、各々の心理作用に果してどれだけの相違があるだろう」こう考えてくると、今の私は真の犯人が味わうと同じ煩悶、同じ孤独を味わっているようである。』


『だが、諸君もやっぱり私を信じてくれないかも知れない、けれどももし―― 甚だ失礼な言い草ではあるが、 ――諸君のうちに一人でも私と同じ人種がいたら、その人だけはきっと信じてくれるであろう。』



「白昼鬼語」


後半は本当に引き込まれ、先へ先へと読まずにいられない。

登場人物に対して、そちらへ行ってはダメだ、と思うと同時に、そうなって行ったらというのを読みたい、という気持ちが沸き起こる。

登場人物の一人になって盗み見ているような感覚もあり、自分もすっかりだまされました。

後味は決して悪くないのも自分の好みに合っていました。


『もしもあの出来事が夢であったとすれば、夢と事実との繋がりはあの電話の時である。あれから自分はだんだんと迷宮の中へ引き込まれ出したのである。』





とても面白かった!











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Last updated  February 28, 2008 11:21:00 PM
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say-zz @ Re:カルーゾ男だ!! ジロ第二十ステージ(05/30) ビルバオ最後の登りまで引いて凄かったで…
JAJA♪ @ Re:カルーゾ男だ!! ジロ第二十ステージ(05/30) とにかくビルバオ、今日は誰がなんと言お…
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