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10分たった。

けど、だれも人の気配はせず、教室はまだ亜衣一人だけだ。

「・・・・・・・・」

さっきの出来事がいまだ鮮明に残っている。

好きだと告白されて、そして     、キスされて。

どうしたらいいのか分からず、まだ教室に立ち尽くしたままだった。


「・・・なにやってるんだ?」


そう私に尋ねてきたのは

「章良、さん・・?」だった。

「って、お前、どうしたんだ!?」いつもと違う私を見て、章良さんは少し焦り気味だった。

「なんでもないですよ・・?」一応、そう言い返す。

「それならいいけど・・・・。一人でそんなところいても、なにもならないわよ?」

今度はお姉さんが私に一言。

・・・そうだ。こんなところでうじうじしてられない。だけど・・・。

「一人にさせてください」

そういって二人を教室から追い出した。


コンテスト参加者も、休憩に入っていて、HAYATOも校舎を廻ってる。

そこで、HAYATOは男女二人組に会った。

「こんにちは、HAYATOくん」女性が、俺に向かって微笑む。

「えっと・・」

「あ、紹介が遅れたね。俺は、桜科2年の久遠章良。・・コンテスト参加者だ。」

男性が自己紹介をし、そして、 と章良さんはさっきの女性に手を向けて

「私が水野綾菜よ。 ちなみに、亜衣ちゃんの従姉。」

「えっ、亜衣の・・?」

「そうよ。 でね、亜衣ちゃん、いま教室にいたけど・・」

会いに行かないの? と言われて俺は「えと・・」とだけ返した。

「ま、それは貴方の自由だけれど。 では、これで・・」

嵐のような二人が、HAYATOを巻き込み、そして去っていった。


さっきの言葉もあってか、一応教室に向かった・・。

教室を、ちょっと小さめの窓からのぞく。

そこには、確かに亜衣がいた。

けど・・、とてもじゃないが、亜衣に話しかけれそうになかった。

亜衣が、何かを失ったようにたっていたから。

そして俺は、教室から少し離れた。



「はぁ~本当、どうしたんだ?あいつ・・」

俺は、なぜか今、亜衣が気になって仕方がない。

本当に気になって仕方がない。


「・・・それだけなのか?」


ふと自問自答をしてみた。

入学してから、色々と亜衣と一緒にいた。 時間の半分は、亜衣といたのかもしれないくらいに。

けど、


『俺、好きな人作るつもりはないんで。』

亜紀先輩に告げた、俺の気持ち。

恋愛はしない。そう、芸能界に入ってから決めた。

偉大な先輩たちの中に、数々の恋愛をこなしてきた人も少なくない。

けど、先輩たちのせいで、泣かされた女性も少なくないだろう。

スキャンダルされるのは、自分じゃなくて『相手』だから。

尊敬できる先輩は、結局は自分が大事な人ばっかりで。 そんな先輩を、俺は嫌う。

一回学校で、俺と亜衣の騒動があったときも、それを痛感した。

やっぱり、やってしまった     、と。


けど、 と俺の心の中で思う。

あいつ・・・・・亜衣は、それくらいでは倒れなかったんだ。

騒動のときだけじゃない。宝探しゲームが終わって数日がたったときだって。

亜衣は悲しそうな顔をしてたけど、強い意志を持っていた。

それが、とっても驚いて、うれしくて・・・

「・・・俺は、亜衣が好きなのか?」

思わず、口から出てしまった一言。

そう言うと、思わず教室へ向かって走り出した。



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