あれは21歳の秋、二百十日の風
の強い日でした。強い風にあおられた木の葉がやけに足にまつわりついてきました。
風も冷たく、コートの衿を立て、身を硬くして家路へと早足で歩いていました。寒村の市外地はすぐに通り過ぎ、限りなく畑・・・・・月は雲に隠れたり、気まぐれに,又顔を出したり、背筋から寒気が走るいやな夜でした。
勤めから帰る私は、おしゃれをしてこんな山道なのにパンプスを履いて、お弁当も入る、手提げかばんを提げていました。
後ろから急ぎ足で、男の人がついてきました、わざとなのか、私のかかとを踏むのです、いやな予感がしましたが、横によけて、その人をやり過ごしました。茶色のとっくりセーターを着て、ズボンに手をっ込んで、早足で私の前を行って行きました。
見たことのない人、どこかの奉公人かしら・・・・私は一本道をひたすら、家に向かって歩いていました。
紅葉橋が見えてきました、空知川の本流15メートル位の橋がもうすぐです・・・・
20メートル程手前にさしかかったとき、男が現れとうせん棒をするのです。左に寄れば左に、右に寄れば右に、2度ほど繰り返し、私は『何かようですか』と言いましたがなにもいいません・・・・
心の中で,うんうんこれが世に言う痴漢!!これは危ない!!とッつ差に私はしゃがみパンプスをつかんで、元きた道をオリンピック選手のようにはだしで走りました。
100メートルほどはしっていると、定時制高校に通っている、健ちゃんに声をかけられました。ああ・・・助かった、助かった。何度も言いました。
その日は台風が来るので休校になり、家に帰るところでした。
家に帰ると、足の裏は傷だらけでした。その後母が紅葉橋近くまで迎えに来るようになりました。
犯人はすぐわかり父がしかりつけ、村からまもなく姿を消しました。
私を嫉んだ従兄弟のお嫁さんが仕組んだのです。とんでもない親戚です。その悪嫁さんは10年後男と駆け落ちして今頃何をしているのでしょう・・・・・ほんとに怖かったですよ・・・・・
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