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2009.10.17
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10月8日 アジア杯最終予選@アウトソーシングスタジアム日本平 16,028人(76%)

日本代表 6-0 香港代表
【得点者】
前半18分 岡崎慎司(清水エスパルス)
  29分 長友佑都(FC東京)
後半6分 中澤佑二(横浜F・マリノス)
  22分 トゥーリオ(浦和レッズ)
  30分 岡崎慎司
  33分 岡崎慎司




日本代表 2-0 スコットランド代表
【得点者】
後半38分 OWN GOAL クリストフ・ベラ(ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズ)
  45分 本田圭佑(VVVフェンロー)


10月14日 キリンチャレンジ親善試合@宮城スタジアム 32,852人(69%)
【得点者】
前半5分 岡崎慎司(清水エスパルス)
  8分 岡崎慎司
  11分 森本貴幸(カターニャ)

  40分 本田圭佑(VVVフェンロー)


 岡田武史監督は、およそ70人以上にのぼるグループを代表候補としてリストアップしてきた。その数は海外組を偏重しアテネ五輪世代を無視したジーコよりも多いが、U-20ナイジェリア大会とシドニー五輪の監督を務めたフィリップ・トゥルシエと比較すると少なくなる。だがこの10月シリーズは、チームとしてのコンセンサスを統一化するとともに、これまであまり出場機会に恵まれなかった選手へ貴重なテストの場を提供することも重要なテーマのひとつとなっていた。
 格下の香港戦が今シリーズに取り込まれたのは、イビチャ・オシム時代のアジア杯で3位以内に入れなかったのが原因だ。さらに二軍編成のスコットランド代表、そして日本協会をナメたとしか思えぬトーゴ代表と闘って「3連勝」という結果は残したが、ブッキング方法への批判はやはり避けられないだろう。

 岡田監督は10月シリーズの第2戦で、思い切った選手の入れ替えを行なっている。昨今の不景気で、日本平と宮城行きの経費を確保できなかった筆者は、横浜でのスコットランド戦のみを観戦した。今回はこのゲームだけをクローズアップし、11月シリーズの行方を占ってみたい。

 ジョージ・バーリー監督は、「フロントラインのパス回しが素晴らしかった」と日本の印象を語っている。なかでも中村憲剛(川崎フロンターレ)は前半34分に左足で放ったシュートを惜しくもサイドネットに突き刺したほか、同40分にも石川直宏(FC東京)と今野泰幸(FC東京)の連携パスに左足で反応している。強烈なシュートはディフェンダーの壁にハネ返されてしまったが、6万1千人を超えるW杯なみの入りとなったスタジアムを沸かせたプレーのひとつである。
 本田圭佑(VVVフェンロー)も後半44分に左足で代表初ゴールを決めたが、得点にはならなかったものの、憲剛から譲り受けた同15分のフリーキックは見事だった。GKの手前にショートバウンドで落ちる弾道で、キーパーたちが最も嫌がるボールの一種だ。完全に押さえ込むことが難しく、次の瞬時の反応が勝負の分かれ目となる。ボールを取りこぼした場合、襲ってくる相手FWよりも素早く反応し、ボールの動きを殺さなければならないからだ。

 それにしても、どこにこれだけ多くのスコットランド人がいたのかと目を疑った。地元の白山で降車した際にも、タータン柄のキルトに編み上げ式の短靴という独特の衣装のスコティッシュが、赤ら顔で舟を漕いでいた。バーリー監督によれば、横浜に集まった母国サポーターは「およそ500人」だそうで、極東に滞在するスコティッシュたちの応援にえらく感激していた。
 スコットランドといえば、東京の人口の半分にも満たない500万人余りのサッカー国だ。協会の設立はイングランドFAに次ぐ1873年と、130年以上の歴史を誇る古豪である。協会設立の前年には、互いに犬猿の歴史をもつイングランドとの試合が行なわれており、これが世界最初のインターナショナルマッチだったと文献には記録されている。民族間の憎悪を代表同士の闘いで中和するという政治的戦略は、その後もサッカーを媒介としてよく行なわれてきた。その歴史的な第一歩がブリテン島における、18世紀初頭から続く支配者と被支配者によるゲームだったわけだ。
 98年のW杯フランス大会に出場した彼らは、移動バスの中で両国の抗争史をテーマにしたハリウッド映画を観賞し、次の戦闘に向けたモチベーションを高めたという。おそらくは『ブレイブハート』のことだろう。監督・主演のメル・ギブソンが、「フリーダーム!」と絶叫しながら処刑されるのがエンディングだ。
 そういえばフランス大会の開幕戦は、サンドニのスタッド・ドゥ・フランスで行なわれたスコットランドvsブラジルだった。大黒柱のガリー・マカリスターを負傷で欠きながら、彼らが得意とする肉弾戦でPKを奪い、1-1で前半を終えている。だがスコットランドの弱点は、大柄な肉体を支える下肢に疲労がたまる後半にある。カフーのヘディングシュートがセルティックDFトム・ボイドに当たり、オウンゴールを献上したまま終了ホィッスルを聴いた。もっともブラジルも、74年西ドイツ大会でユーゴスラビアとスコアレスドローに終わったのをはじめ、開幕試合で苦しむことが多い。96年のアトランタ五輪で日本に敗れた「マイアミの奇跡」は、あまりにも有名だろう。

 さて、スコットランドはW杯に8回の出場を刻んできたが、94年のサウジアラビアや02年の韓国や日本のように、ファーストラウンドを突破した経験が一度もない。今年の南アフリカ大会予選にいたっては、アムステルダムで0-3、オスロで0-4と大量失点したのが響き、グラスゴーのホームゲームでオランダに0-1と敗れたのを最後に得失点差で出場権を逃した。高さはあっても、得点力がない。それがスコットランドに対するイメージだった。しかも今回の日本遠征では直前になって主力メンバーを落とし、経験豊富な30代のベテラン勢はひとりもいない。明らかに、来秋からスタートするユーロ12に向けたチーム編成だった。

 6-0と爆勝した香港戦から中1日、岡田ジャパンは大幅にメンバーを入れ替えてきた。4日後のトーゴ戦に向けたコンディション調整という理由もあったが、「新しい選手を試したい」と考えていた指揮官には願ってもない過密スケジュールだったろう。「スコットランド戦でベストメンバーを当てるべき」という意見が一部のメディアであったのもたしかだ。ただ、代表チーム解散後に各クラブに戻る選手のフィジカルを考えれば、岡田監督のプランは決して間違っていない。
 香港戦とのメンバーの入れ替えは、以下の通りである。
 玉田圭司(名古屋グランパス)と岡崎慎司(清水エスパルス)の2トップを、前田遼一(ジュビロ磐田)のワントップにフォーメーション・チェンジした。遼一は10月3日の第28節終了時点で15ゴールをあげ、今季リーグランキングのトップに立っている。この00年アジアユース年間MVPは、岡崎よりも身長が10cm高いというだけでなく、低さを逆に利して頭から飛び込む岡崎とは明らかに異なるタイプのFWだ。
 この変更に伴って、大久保嘉人(ヴィッセル神戸)と中村俊輔(エスパニョール)のセカンドラインが3人に増やされた。序盤は左からナオ、憲剛、そして右が俊輔とポジションを争う圭佑だ。さらに遠藤保仁(ガンバ大阪)と長谷部誠(ボルフスブルク)の3列目を、稲本潤一(レンヌ)と橋本英郎(ガンバ大阪)に変更し、香港戦でボックス型だった中盤を逆台形型に編成し直した。最終ラインも全変更された。左から長友佑都(FC東京)、トゥーリオ(浦和レッズ)、中澤佑二(横浜F・マリノス)、駒野友一(ジュビロ磐田)だった4人が、同じく今野、阿部勇樹(浦和レッズ)、岩政大樹(鹿島アントラーズ)、内田篤人(同)に総入れ替えしている。
 なかでも興味深かったのが、バーリー監督も指摘した「フロントライン」だった。いずれも左足を苦にしない3人だ。ナオは遼一に次ぐ14ゴールでリーグ得点ランク2位、憲剛は優秀なパサーであるだけでなく正確なミドルシュートも撃てる。そして圭佑は、昨季オランダリーグ2部の得点王と、爆発力が期待されるメンバーをズラリと並べてきた。

 なかでも目を見張らせたのが、ナオのプレーである。
 FC東京でデビューした当時は、スピードだけで勝負するグリーンボーイだった。やがて自分のスピードをより速く見せるため、ジョギング程度の走りで動き、そこから一気にギアを上げていくという工夫を見せるようになった。原博美監督が2度目の指揮を執った07年当時には左足の精度を上げ、同監督に「お前のシュートは右足よりも正確じゃないか」と冗談を飛ばさせた選手でもある。
 進化を続ける男が久びさに代表に招集されたのは、今季リーグでブレイク中の選手のひとりだからだ。そんなナオのプレーを観ていて、気づかされたことがある。体の入れ方が格段にうまくなってきているのだ。そう簡単にはボールを奪われないようになり、そこに彼の特徴であるスピードがブレンドされ、以前にも増した突破力を生み出していた。「ゲームの流れを変えたいときにナオが使える」とは、岡田監督の言葉である。22名のW杯最終メンバーに向けての競争が、ますます激化の一途にあることが窺えるコメントだった。

 けっきょくスコットランドは後半38分、オウンゴールで失点した。後半10分、遼一に替わって投入された森本貴幸(カターニャ)から圭佑へと繋がれたボールを、駒野にクロスで振られ、ドタバタの中から自陣ゴールへ押し込んでしまった。スコットランドの弱点である、後半の弱さが出た形だ。さらに終了間際には、森本のシュートがDFに弾かれ、そこに飛び込んだのが圭佑だった。森本のシュートは、トーゴ戦でも見せたターンシュートだ。ディフェンスを背に負っても力負けしない強さが、彼にはある。
 日本がゲームの大方を支配していたため、ディフェンスの連携をもう少し観ておきたかったというのが正直なところだ。とくに代表初出場の岩政がどれほど通用するのか気になっていたのだが、岡田監督の評価は高い。「スコットランドの高さにほとんど負けていませんでした。カバーリングするための戻りもひじょうに良かったと思います」と語る。
 こうして振り返ってみると、指揮官が目論んだ新戦力の「テスト」は、それなりの成果をあげたといってよいだろう。

 ロード・トゥ・サウスアフリカへの次のステップは、来月の11月シリーズだ。「海外組中心で臨む」という14日アウェイの南アフリカ戦に続き、中3日で香港とのゲームが現地である。長い移動が強いられるため当然、同じ選手は使えず、またヨーロッパ組は現地で解散となることが予想される。ホームで圧勝した香港とのゲームで誰を残し、誰を加えるのか。「Jの労働者」の興味は尽きない。


【了】





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最終更新日  2009.10.18 02:09:03
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