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2014.07.02
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6月28日@エスタディオ・ミネイロン(ベロオリゾンテ) 57,714人(93%)

ブラジル 1-1 チリ
    3(PK)2
【得点者】
前半18分 ダビドルイス(ブラジル/チェルシー)
前半32分 アレクシス・サンチェス(チリ/バルセロナ)

 延長後半3分、足に何重ものテーピングを巻きながら、タフなマーク作業を続けていたCBのガリー・メデル(=カーディフ)が、プレー不能に陥る。サンパオリ監督は、こうした不測の事態も見越して3枚目のカードを残しておいたのだろう。指揮官の賢明なリスクマネージメントが光った。メデルのかわりに送り出されたのが、ホセ・ロハス(=ウニベルシダッド・チリ)である。
 しかしマルセロ・ビエルサとサンパオリの子どもたちは、すでに人間の限界点に近づいていた。大柄なセレソン相手にも体力で負けなかったラ・ロッホたちだったが、彼らの生命線であるスピードを失えば、フィジカルコンタクトの回数が増える。ピッチのあちこちで、カナリアの強靭さに屈したロッホが転倒し始めるようになった。それでも、相手に身体を寄せる作業だけはあきらめない。少しでもブラジルのプレーを遅らせて、自分たちの数的有利を保つ必要性に迫られていた。得点能力を失った彼らの脳裏には、すでに「PK戦突入」が浮かんでいたにちがいない。残されたラストチャンスに、およそ半世紀ぶりとなるクオーターファイナル進出を託したい。そのためには、なんとしても失点を防がなくてはならなかった。

 残り3分、最後の力を振り絞って歓喜をつかもうとするネイマール(=バルセロナ)の仕掛けに、チリは3人で取り囲んでゴールを死守した。グループAのブラジル戦をスコアレスドローにもちこんだメキシコにも同じことがいえるが、相手とのどうにもならない体格差をどう埋めるかが彼らの命題である。しかも延長、残りわずかという時間帯だ。これほど苦しく、自虐的な空間はない。


 PK戦に臨む前に組まれた両チームの円陣で、目に見えるかたちで疲弊の激しさを訴えたのはチリだった。役に立たなくなった下肢の激痛で、立ち上がれぬまま円陣に加われないない選手が何人かいたのである。勝負は、この時点で決まっていたのかもしれない。
 ブラジルはふたり目のビリアン(=チェルシー)が枠を外したが、彼は延長後半の15分しかプレーしていないのだから、疲労以外の原因でフェリポン(=ルイス・フェリペ・スコラーリ)の期待を裏切ったことになる。
 ブラジル人プレーヤーのあいだでは、昔からミズノ製スパイクの評判が良い。ヴェルディやアントラーズで数かずのタイトルを獲得したビスマルクも言っていたが、少年時代から慣れ親しんできた、裸足に近い感覚が心地良いらしい。「ランバード」は、開発当初のミズノがアメリカで展開していた逆輸入ブランドだ。4人目のキッカーとなった元フロンターレのフッキ(=ゼニト)も、いまだに青のランバードを手放せない。そんな彼ももブラボに弾かれ、勝負の行方は5人目以降のキッカーに委ねられた。
 一方のチリは、ひとり目のピニージャがジュリオ・セザールに阻まれる。彼も延長突入前に投入されたばかりのポストマンであり、30歳というキャリアを買われてのファーストキッカーだったはずだ。サンパオリのショックは想像にかたくない。しかしGKの疲労度は、フィールドプレーヤーのそれとは比べるべくもない。問われるのは、メンタル面のタフさだけである。つまり、冷静なセザールの読み勝ちだった。
 ふたり目のサンチェスと最終キッカーとなったゴンサロ・ハラ(=ノッティンガム・フォレスト)は、いずれも120分フルに闘ったチリのキープレーヤーだった。サンチェスは止められ、ハラはポストに嫌われた。悲鳴を上げていたであろう彼らの肉体に、人間の限界を感じざるをえなかった。

 だが、ブラジルにも黄信号が灯っている。はるかに格下のチリに手を焼き、延長までもつれこまれた闘いで心身を消耗させた。PK戦で勝ち上がったチームは、次の試合での勝算が低いという厳然たるデータも、彼らの不安定な心境を物語っていた。
 同国史上初のベスト8に進出したコロンビアには、勢いがある。そのいっぽうで若く、経験が浅い。だがグループ予選をわずか2失点で突破し、ウルグアイを骨抜きにしたコロンビアはまちがいなく手強い。しかも指揮官は、若い世代の手綱に取り慣れたホセ・ペケルマンだ。
 94年からアルゼンチンのユース代表監督を務め、U-20世代のワールドカップに4度挑戦して、3度の優勝をはたした指揮官だった。06年ドイツ大会では、A代表の監督としてベスト8へ導いてもいる。しかし彼の指導キャリアはアルヘンティノス・ジュニアーズから始まっており、ディエゴ・マラドーナやフェルナンド・レドンドらを育てたことでも知られる。代表チームは、監督のサジ加減ひとつで結束力が生まれたり、驚くような力を発揮したりもする。チリのサンパオリやメキシコのエレーラは、その意味で充分に合格点だったといえよう。では、ザックはどうだったのか。日本協会は今大会の総括会議を予定している。彼らがどう評価したのか、その詳細についてはしばらく待ちたい。

【つづく】





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最終更新日  2014.07.02 11:39:58
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