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2011.01.14
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不況でも十分裕福なのになぜ“幸せ”を実感できない?低成長時代の日本人を苦しめる「幸福のパラドックス」
2011年1月14日(金)08:40【第241回】 2011年1月14日 宮崎智之 ダイヤモンドオンライン

幸せってなんだろう?」 そんな誰もが一度は抱く素朴な疑問を、国家レベルで考えなければいけない時代が訪れた。長引く不況や就職難など、社会全体が閉塞感で覆われている現在 、「自分は不幸だ」と考える人が急増している
自殺者数も3万人台と、相変わらず高水準で推移している。こうした現状に鑑み、政府は昨年末に「新しい成長」の指標である 「幸福度」についての研究会を立ち上げた。
今後求められるのは、経済中心主義からの パラダイムシフト が起ころうとしている 日本を力強く生き抜く「低成長時代の幸福学」である 。しかし日本人は、世界でも指折りの豊かな国に住んでいながら、 幸せを実感できない国民でもある

6割5分――。これが現代日本の「幸福度」だ。
 2009年度の『国民生活選好度調査』(内閣府)では、国民に10点満点で「幸福度」を聞いたアンケート調査に対して、平均で6.5点という結果が出た。この方式は主観的なデータを採取するものであり、答えた人のその日の体調や機嫌などによって大きく左右されてしまう難点がある。

 しかしながら、0点(とても不幸)や10点(とても幸せ)という両極端ではなく、平均の5点を基軸に物事を捉えがちな日本人の国民性を考えると、意外と現代社会の空気を反映した数字だと言えるかもしれない。

「5点を切ると不幸だという気がするので、6点ぐらいではないでしょうか」

 こう話すのは、医療系ソフト会社で営業マンとして働くAさん(男性/29歳)。四年制大学の経済学部を卒業し、給料は人並み。両親も健在で、どちらかというと 裕福な家庭で育った 。いわゆるロスジェネ(ロストジェネレーション)の最終世代だが、正社員の職を得て働いている。悩みといえば「彼女がいない」くらいだ。

「幸福度を客観的に測るのは難しいと思います。人それぞれですから。むしろ不幸度の方が、データとしては正確なのかもしれません」(Aさん)

 幸福かどうかを考える前に、不幸であるかどうかを考えてしまう人は意外と多い。「主観的には大手を振って幸福だとは言い難いが、客観的には不幸な要素があるわけでもない」。そんな気分がAさんに「6点」という点をつけさせたのかもしれない。

 同じく29歳の男性で、マスコミ関係の職場で働くBさんも、自身の幸福度を「6点」と評価する。有名私大の大学院を修了し、海外への留学経験もあるBさん。「上昇志向が強い人は、高い点数をつけない」と分析し、「(個人が選択できる幅が狭い)独裁国家のようなところに住む人の方が、案外幸福度が高かったりするんじゃないですか」と話す。

 出口の見えない不況が続いているとはいっても、日本は間違いなく 世界でも指折りの裕福な国家である。 中国に追い抜かれたとはいえ、GDPは依然として世界トップレベルにある。



 経済のグローバル化により、現代の日本人は「先の見えない競争」に晒されていると言える。昨今の自己啓発本ブームなど、生活防衛のために自分に投資する人は後を絶たない。「平均志向」と「上昇志向」、対立するこの2つの考え方が共存する現代の日本は、非常にストレスフルな社会とも言える。自殺者が年間3万1560人(2010年速報値)と高水準で推移しているのも、うなずけると言うものだ。

若者にとって低成長時代は当たり前
「幸せの尺度」は経済価値から人間関係へ
 ちなみに、前出のAさんとBさんに「何があれば幸せか?」と質問したところ、「つながり」(Aさん)、「承認」(Bさん)という言葉が返ってきた。ここに若者層の幸福度を考える重要なキーワードが隠されている。

 実際、冒頭の調査において「幸福度を判断する際、重視した事項」を聞いたアンケート結果によると、「友人関係」と答えた15~29歳の割合が60.4%と、他の年代と比べて突出して高かった。


「リストラに遭うなど、仕事で失敗しただけで自殺するような社会は不幸だと思う 。高い年収をもらうより、 相談できる友人がいて、 いざというときに逃げ場所があるかどうかの方が重要」とAさんが語るとおり、経済的な価値より人との関係性の方に軸足をシフトさせている若者層は少なくない。

 もちろん、関係性を重視するのは、若者層の普遍的な特徴だという見方もある。しかし、Bさんも「周囲の人は表現活動など、 低収入でどれだけ楽しく生きるかという模索を始めている」と話し 、若者の「上昇志向」が必ずしも経済的な価値だけに向いているというわけではないことを強調する。

 検察庁の資料によると、09年の自殺者3万2845人のうち、経済・生活問題が動機だった人は8377人もいた。インターネットの「自殺掲示板」のような事例は、「つながり」や「承認」が負のベクトルに向いてしまった結果だと言えそうだ。

 しかし一方で、バンドやブログなどの表現活動や、ヨガ、山登りなどの趣味に没頭し、緩やかなコミュニティのなかで互いを承認し合いながら、ストレスフルな社会を生き抜く氷河期世代の姿も見え隠れする。

経済状況が厳しいと言われていますが、小さいときからそうだったから『当たり前だ』と思っていますよ。小学校のときにバブルが崩壊しましたから 」(Bさん)。

 若者層にとっては低成長が当たり前。「暗い世相に不平を言うよりも、新しい価値観を身につけた方が楽しい」と、すでに低成長時代へのパラダイムシフトに順応した若者が出始めているのかもしれない。

日本人は年をとるほど不幸になる?
「幸福の指標」づくりに乗り出す政府
 社会全体に閉塞感が蔓延し、人々の幸福に対する価値観も変わりつつある現状に鑑み、政府は昨年末に「新しい成長」の指標である 「幸福度」 についての研究会を立ち上げた。今年6月に提言をまとめ 、「幸福感の低い人の割合を減らす」政策を実行していく方針だ。

“幸福のパラドックス”から垣間見える「幸せになること」の難しさ
実際、日本の幸福度は国際的に見てどのくらいの水準なのだろうか。これから幸福度の指標をつくろうとしている日本としては、気になるところだ。しかしながら、国際的な評価は指標によってまちまちであり、一概には判断できない現状がある。

 たとえば、UNDP(国連開発計画)が発表した『人間開発指数』における日本の順位は11位(2010年)だが、英国調査機関のNEFが発表した順位によると75位。どういった評価項目を採用するかによって、結果は大幅に変わってくる。

 『人間開発指数』とは、出生時平均余命や平均就学年数、1人当たりGNI(国民総所得)などを指標として採用したもので、1位はノルウェーだった。また、『国民生活選好度調査』のように、幸福度を10段階で調査した『欧州社会調査』の結果では、デンマークが健闘。7点以上が92.8%と日本を39.2ポイントも上回り、高福祉国家の力を見せつける形となった。

 一方で、日本では高齢になるにつれ幸福度が減少傾向にあるという特異なデータがある。さらに、高齢者層ほど健康状況を幸福度の判断する際の基準にするという調査結果もあるため、福祉の充実は幸福度アップのために急務であると言えそうだ。

「幸福のパラドックス」から垣間見える
日本人が“幸せ”になることの難しさ
 それでは、今後日本は「幸福度」に関してどのような指標をつくっていくべきなのか? そもそも、「幸福」という漠然とした概念を正確に定義し、国民の心を豊かにすることができるものだろうか?

 内閣府経済社会総合研究所で客員主任研究官を務める白石小百合氏は、「幸福のパラドックス」という言葉を用いて、 その難しさを説明する。
所得と幸福度の関係を例に挙げてみよう。様々な調査結果で明らかになっているとおり、主観的幸福度を所得別で見ていくと、高収入を得ている人の方がより幸福度が高いことがわかる。

国が個人の「幸福度」を決めてしまうことに、問題はないのか?
 しかしながら、1人当たりの実質GDPと幸福度を時系列で見てみると、GDPは上昇傾向にあるにもかかわらず、生活満足度は減少傾向となっている。これが、「幸福のパラドックス」と呼ばれる現象だ。

 その原因の1つとして白石さんが指摘するのは、「所得が上がったことによる嬉しさに慣れてしまう」こと。つまり、「幸福度を高めることを政策目標とした場合、ある政策の結果として幸福度が一旦は上昇したとしても、個々人がすぐにそれに適応してしまうと幸福度は元に戻るかもしれない」という難しさをはらんでいるのだ。

 また、自分の所得と同様、周囲の所得も上昇しているので、所得が増えている実感を持ちにくいことも原因だと考えられる。発展途上国の人々からすれば随分贅沢な話だが、これは程度の差こそあれ、 裕福な生活に慣れ切ってしまった先進国の人々に共通するトレンドかもしれない。
心の豊かさには多角的な視点が必要だが、

国が個人の「幸福度」を決めることへの疑問も  このように、幸福度の尺度を決めることは非常に難しい。さらに、本来は個々人の価値観に委ねられるべき幸福度を、政府が決めてしまうことへの抵抗感を持つ人も多い。

「政府が決めた指標から外れてしまうと幸福ではない」という、いわば「国家のお墨付き不幸」を負わされてしまっては、厳しい経済状況のなか新しい価値観を模索し始めたたくましい氷河期世代の若者であっても、さすがにたまらないだろう。

 しかし、前出のAさんやBさんも「幸福度を重視する方向性自体には賛成する」と言うとおり、 物質主義の時代から心の時代へと移行している現代では、「国の豊かさ」を考える上で、経済以外の多角的な指標が必要なことは確かだ。
 内閣府が進めている 幸福度の指標づくりでは 、5月にパブリックコメントを取ることも計画されている。政策の行方を左右する問題なだけに、多くの国民を議論に参加させ、その声を指標づくりに反映していかなければならない。


1.国の幸福度調査など不要である。
2.幸福度は人によって、その人の考え方で異なる。
3.毎日の食を得ることができただけで幸せなことで無上の幸せに感じる人も多い。
4.しかし、億万長者であっても不幸と感じる人がいるのです。
5.幸福度は比較の問題で、日本は過去、バブル時代があったのです。そのときは多くの人が幸せでしたが、バブルがはじけて経済が停滞し不幸と思う人が増えたのです。
6.ノルウエーに幸せな人が多いと言いますが、日本を離れる気はしません。
7.私は日本に住んでいるだけで幸せです。
8.そう思う人が多いので、外国に行かない若者が増えているのです。
9.しかし欲望を聞かれると、いっぱい欲望はあります。だから不幸だというのは間違いでしょう。
10.「小欲知足」を教えていないから、不幸だと思うのです。





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最終更新日  2011.01.14 15:20:50
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