ユウ君パパのJAZZ三昧日記

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syoukopapa

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2006.11.07
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カテゴリ: 私の小説集
9月23日。短い夏も終わり、秋だなと思う間もなく降りしきる雨。 この雨の風情はもう既に晩秋。デニムシャツで十分であろうと思って いたが、今の天気ではかなり肌寒い。それでも秋のちょっと寒めの雨は、 僕には何かとてもなつかしいもののように思えた。そう、たしか彼女と出 会ったのも11年前のこんな秋の1日であった。

11年前といえば、僕が普通の就職を辞めて、アルトに自分の夢を 賭けようと決心した頃。ゼミの教授には変人扱いされた挙げ句、ある 大企業の内定を辞退した。一言でいえばこんなところだが、その当時は かなり僕も揺らめいていた。確かに音楽をやりたいのは本心からなの だが、具体的にどうやっていくのか、仕事として続けられるのか?

そんな秋のある日、丁度その頃のライブセッションのリーダに連れ ていってもらった芸能プロダクション。そこに彼女もモデルの卵とし て来ていた。19歳の屈託のない笑顔。かなりブルーになっていた僕を明るくさせるほど、きれいな笑顔。

「 荒井美樹です。これから、芝居や歌や19の私が今しかできない ことに、どんどん挑戦していきたいと思っています」

かわいらしい顔からは想像できないほど、そのきっぱりとした口調 には彼女の強い意志が感じられた。ちょっと無理をしているようだが、 そこには確かに19の彼女がいた。3歳も年上なのに、揺らめいてい た自分が恥ずかしくなった。

「 僕は山本健二。ちょっと決心が遅かったんだけど、大学辞めて、アルトサックスを吹いていこうと思っている。」

「 いいなあ、ジャズか」

「 ジャズとかも聴くの?」

「 オヤジが好きで、子供のころから随分聴いたわ。サックスだったら、ウエイン・ショーターが最高ね」



僕と美樹はこのように出会い、やがて親しい友人となった。お互い夢を語り合い、ちょっとしたことでくじけそうになったときも、慰め や同情ではなく、同じ価値感を持つものとして支え合った。口調はキツクても、お互いの痛みがわかるので、僕は美樹の心のこもった言葉には何度も勇気づけられた。そう、僕にとって彼女はかけがえのない存在になっていたし、彼女にとっても同じことであったと思う。しかし、すれ違いはちょっとしたこと(かなり大変なことであったが)で始まり、その音がきしむほどになっては、もう僕も美樹もなす術を失っていた。それは、美樹が24になった春のことである。





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最終更新日  2017.11.17 09:48:07


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