ユウ君パパのJAZZ三昧日記

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syoukopapa

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2006.11.05
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カテゴリ: 私の小説集
 彩奈がアメリカに移り住んで一年が既に経っている。自分のアートを 磨きたいと言って、さっさとアメリカに渡った。ターナーを見て、何かひらめいたらしい。相変わらず決断するのが早い。

 「日本には何か自分を追い詰められる雰囲気がないの。満足しているとは思えないけど、皆不幸せではないっていうボケタ感じかな。かなり消極的な現状肯定しか存在しない。」

 「自分を追い詰めるって何?」

 「ここから一歩も引けない、ここを駆け抜けないと何も生み出せないという現状認識。でも、暗く閉塞状態に陥ることではないの。むしろ明るい感じ。自分のプライドと勇気を持って、自分の能力で表現すること。表現が国境の枠を越えて、誰にでも伝わって、感動させる力を持つのが私の理想。」

 彩奈の現状を把握する能力と明確な目的意識に僕は驚かされる。

 「具体的にイメージできる人はいるの?」

 「朝青龍かな。彼の表現は国境の枠を越えて、誰にでも伝わると思う。」

 「君の挙げた例には日本人がいないんだけど、何故かな?」

 「さっきも言ったけど、皆何となく幸せで、特に自分を表現しないでも十分生きていけると思い込んでいるからだと思う。とても甘えた全く通用しない考え方だけど。自分の国が世界の中でどのように責任を果たすべきとか、どう発言すべきかについて真面目に答えられる人殆んどいないもの。偏差値教育がどうとか言い訳する人が多い


 何と彩奈に刺激を受けて僕も日本の生活を捨てて、今彼女のいる町に向かっている。仕事を捨てるとか環境を変えるとか随分面倒に思っていたが、やってみるとそうでもなかった。むしろ気持ちがいい。元春の詞でいえば、失くしてしまうことは、悲しいことじゃない。

 バンドン。オレゴンコーストの小さな田舎町。彩奈が今住んでいる。彼女からの手紙によると、カスケード山脈といわれる美しい山々と、渓谷が印象的なウイラメットリーバーに囲まれた素晴らしい所だそうだ。僕もここで長年の夢であった物書きになるつもり。物書きで食っていけるかどうかは勿論判らないけれど。少なくても彩奈の言うように、国
境の枠を越えて誰にでも伝わる表現ができるように、自分を追い詰めていきたいと思う。プライドと勇気を持って。

 全米一と言われるハイウエイから、手紙に同封された地図に従って、


 「今日はCoos Bayでスケッチして来るわ。そこの波はとてもきれいで、Coos BayはBlue Waves Bayとも言われているのよ。一緒に行かない?」

 朝の陽光にきらめくBlue Wave。うねりの波。飲み込むように打ち寄せる音。そのありのままの粗削りな姿が、プライドと勇気を持って生きていくんだと僕たちを励ましてくれた。

(オシマイ)





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最終更新日  2006.12.26 12:17:13


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