ユウ君パパのJAZZ三昧日記

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syoukopapa

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2006.11.09
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カテゴリ: 私の小説集
JAZZのセショッンでパーカッションとドラムがお互いの主張をしながら、融け合っているようなコラボレーション。僕がNYから戻り、美樹と暮らすようになった時の2人の関係を表現するのにこれほど的確な言葉もないと思う。美樹はモデルや女優としてだけではなく、同世代の女性の気持ちを表現する、音楽活動も始めていた。他人の書いた曲だけを歌うだけではなく、作詞もしていた。彼女が詞を書く時に、なかなか締切までに完成しないことも何度かあった。

「 また、徹夜したのか? 目がハレボッタイぞ。」

「 うん、またなの。肌に悪いのよね。でも、納得いかない詞だけは絶対いやだから。」

そう、美樹は完璧主義者なのだ。

「 どんなイメージを思い描いているんだ?」

「 若い女の子が水族館にいるの。彼女は淡い恋をしていて、何もかもが楽しくて仕方がないってところかな。その水族館で見たイルカの笑い、彼女にはそう見えたんだけど、その笑いにさえも彼女はすごくいとおしさを感じるの。そう、こんな全てのモノに対してとても優しくなれる気持ちを詞にしたい。」

「 美樹の優しくなりたい、というメッセージだね。よし、こんな曲はどうだろう?」

僕は彼女のイメージがふくらむようにアルトのadlibをした。

「 わあー、素敵。なんか赤ちゃんを包み込むような、優しい曲ね。」



「 ありがとう、健二。なんとか、詞ができるような予感がするわ。」

そう言いながら、彼女は自分の部屋に再び籠る。締切は今日の昼まで、あと3時間。

「 健二、やった!!やった!!やった!!」

と絶叫(?)しながら、本当に大喜びで、僕に抱きついてくる。

「 詞の題名は、何にしたの?」

「 Elfin。秋の晴れた午後、静かな水族館にいる、かわいいイルカのイメージなの。」

「 とてもいいタイトルだと思う。美樹の優しい気持ちが表れているよ。」

こんなときは、美樹は満足できる仕事をしたという感じで笑顔を見せてくれる。本当にあどけない。まるで高校生のようだなと思いながらも、彼女の笑顔は僕のインスピレーションそのものであった。彼女はこのころ本当によく笑ったし、僕も同じだった。

「 これ、オカシイね。」

と彼女が笑い出したかと思ったら、笑いが止まらなくなって1時間近くも笑っている。彼女が何について笑っているのか良く知らないのだが、僕もたまらず嬉しくなって笑いが止まらなくなってしまう。一緒にいるとお互いに最高に安心できて、変な照れや気遣いもなく、子供のようになれるのだ。幸せな気持ちがごく自然に笑顔になっていた。

 僕には彼女の笑顔が永遠に思えたし、そうなることを心の底から望んだ。しかし、当たり前だが永遠ということはあり得ないことだ。僕と美樹は2人でいる時間をとても大切にしていたが、お互い仕事が増えてきて、すれ違いも増えてくる。時間だけではなく、本来は2人だけで決められることもそうはいかなくなっていた。美樹の妊娠。彼女と暮らすようになって、約1年くらいの出来事だった。





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最終更新日  2017.11.17 09:44:47


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