ユウ君パパのJAZZ三昧日記

ユウ君パパのJAZZ三昧日記

PR

カレンダー

カテゴリ

カテゴリ未分類

(0)

JAZZ

(2361)

落語

(287)

将棋

(144)

家事

(118)

私の小説集

(22)

趣味

(87)

映画

(30)

読書

(42)

子育て

(610)

グルメ

(37)

プロフィール

syoukopapa

syoukopapa

2006.11.15
XML
カテゴリ: 私の小説集

  「わぁー、おいしそうな匂い。ヒロ、何作っているの。」

  眠そうな目をこすりながら、ジョーン。

  「ハーブ・オムレツ。クレッソンとトマトを乗っけて、完成だ。」

  ややお子様ランチ的だが、鮮やかな出来栄えだ。

  「とってもカワイイわ。何か食べちゃうのは、可哀想みたい。」

  「そんなこと言わないで、食ってくれよ。抜群にうまいんだ。今コーヒーを淹れるから。」

  「それでは、いただきます。」

  器用にナイフとフォークを操る、彼女.ハーブ・オムレツが彼女の口の中に滑り込む.

  「本当に香ばしくて、おいしい。」

  ハーブ・オムレツは俺の得意料理。シンプルだが、最高だ。気にいった相手にしか作らない。カンの良いジョーンはすでにこの朝飯の意味することを感じ取っているようだ。このジョーンたちのアパートに来て、もう10日。ナカナカ手に入らなかった部品もやっと調達。俺のハーレーのご機嫌もバッチリだ。つらいことだが、ジョーンと別れる時が来た。

  ご馳走さまと言ったかと思ったら、もうブルーのデニムシャツに、ホワイトジーンズ。彼女の清楚な仕事への身支度。いつもながら、彼女のテキパキとした行動には感心してしまう。

  「もう、この町を出ていくのね。」

  なるべく自分の感情を込めずに、尋ねるジョーン。

  「ああ.今日の午後あたり、行こうと思う。君にも、ジャニスにも世話になった。どうもありがとう。」

  俺も辛さが伝わらないように、短く答える。

  「それじゃ、1時ぐらいに店に来て。今日は早番だから、その時見送るわ。いいかしら?」

  「いいさ。」

  「じゃ、行ってきます。」

  9月というのに、いやになるほど照りつける太陽。すっかり機嫌の直ったハーレー。尻込みする俺を旅にへと促す。この10日のことが走馬灯のように駈けめぐる。こんなおセンチ、似合わないなとひとりごちる。ジョーンとの約束よりも少し遅れて、ハンバーガーショップ。まだ、彼女はいない。来ないのかも知れない。このまま、行こうか?

  しかし、かなり遅れてダークグリーンのコンパーチブル。いつでもカッ飛ばせる状態のようだ。

  「ごめん、遅れて。」

  「いや、いいさ。そういえば、こいつの後ろに乗せてやる約束だったな。」

  「覚えてくれたのね。でも、いいわ。」

  「ええ?」

  「ヒロとはまた逢えると思うから。その時に、又お願いするわ。」

  「ああ。」

  「それじゃ、あの雲の下まで走ってお別れしましょう。」

  「わかった。思いきって、飛ばすよ、ジョーン。」

  「OK!!」

  彼女の合図で、スポーツスターとコンパーチブルは徐々に加速する。相棒と俺の久しぶりのコラボレーション。何の支障もなかったかのように、至ってスムーズだ。

  随分遠くに見えた雲が、ぐんぐん近付く。ジョーンのブロンドも乾いた風に流れている。かなり走ったはずだが、俺には一瞬のように思えた。お互いの間合いを計って、自分のマシンを減速する。もう、あの雲の下に来てしまった。言葉もなく、2人ともマシンから降りる。自然と唇が触れ合う。かわいらしくて、繊細なキス。

  「さよならは言わないわ。元気で。」

  それだけ言うと、彼女はコンパーチブルをUターンさせて一気に加速した。相変わらず、テキパキしたものだ。いい旅になるなとの予感に、俺はハーレーダビッドソンのエンジンを再びかける。









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006.12.27 12:51:39


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: