トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2007/06/30
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カテゴリ: 音楽
tanz walzer
02. ブレーメン
03. ジュビリー
04. ミリオン・バブルズ・イン・マイ・マインド
05. アナーキー・イン・ザ・ムジーク
06. レンヴェーグ・ワルツ
07. 恋人の時計
08. ハム食べたい
09. スラヴ

11. スロウダンス
12. ハヴェルカ
13. 言葉はさんかく こころは四角
14. ブルー・ラヴァー・ブルー

■フィルハーモニーの街、ウイーン。弦楽器の華麗な装飾の前にくるりの音楽はよりいっそう際立って見える。ギター、ベース、ドラムスという3人編成のロックバンドがヴィオラ、ヴァイオリン、チェロなどのオーケストラの音を加えて作り出したこのアルバムはクラシックの様式美に傾くどころか、かえってこのバンドの持つ本質的な優しさとか力強さとかをシンプルに浮かび上がらせる結果となったようだ。

■インストゥルメンタルなM1のオーケストレーションだけを聴いたら誰もそれがくるりのニューアルバムだとは思わないだろう。そんな不安とか当惑とか期待とかを一瞬にして吹き飛ばしてしまうM2「ブレーメン」のそびえ立つような名曲感は圧倒的。今までのこんなくるり、あんなくるり、そんなくるり的な混沌としたくるり像を軽く飛び越えてしまうようなこれこそがくるりという傑作。

■M2,M3に代表されるような救世主的な音楽は10年やってきたからこその自信かもしれないし、もともと持っていた岸田君の資質なのかもしれない。音楽的ルーツをジャズやブルースを飛び越えクラシックまで遡って、あらためて辿り着いたのがすごくシンプルで肯定的な音楽。それをあえてロックと呼ぶ必要はないかもしれないが、ギターもベースもドラムスもサウンド全体がその音楽を謳歌している。スピリッツは間違いなくそれだ。

■全14曲(M14はボーナストラック)、多彩な楽曲が並んでいるが、取り散らかされた印象は薄く、整合性すら感じる。その理由は一貫した気分がこのアルバムに貫かれているせいなんじゃないか。それは音楽は楽しいもので美しいものなのだという考え方なんだと思う。

■M5はバルトークとピストルズの共演かと思えるくらい刺激的だし、M10のリズム感は進化したくるり節の西洋風な到達点かのよう。M8で「食べたい」3部作(うめぼし・スピッツ、ラーメン・顕子、ハム・くるり)は完結。M13は「天然コケッコー」の主題曲。ジョゼのラストにピタリとはまった「ハイウェイ」を思わせる佳曲で、エンドロールと言えばくるりという定評を補足する名曲がまたひとつ増えた。

■ギターの大村君が抜けてギター岸田、ベース佐藤の二人組になってしまったこのバンド(今回はドラムスに菊地悠也客演)だが、メンバーが減ったところで損なわれた音楽性は見あたらない。岸田繁がいる限り、くるりは不滅だと書くと、なぜだかイギリスのあのバンドのことを連想する。そういえば二人組になったあのバンドが出した「Apple Venus」という傑作も弦楽器の音が相当フューチャーされていたっけ。そうか岸田君は京都のアンディ・パートリッジなのかもしれないな。

■これが7枚目のオリジナルアルバムだと知って意外に寡作なバンドだと思った。もっと数多くの作品を発表していたような気がしていた。それだけ名作、話題作が多かったからかもしれない。その中でも今回の作品は間違いなく彼らの代表作にあげられるものになっていると思う。ショパンやラヴェルのワルツで踊るのは、結構難しいと思うけど、くるりのワルツは無意識に身体が動いてしまう。たとえそれがワルツでもジルバでも、そんなジャンルなんか吹っ飛ばしてしまうような音楽がくるりだ。





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Last updated  2007/06/30 09:35:45 PM
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Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…
Mr.Zoku@ Re:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) 今年出た[Deluxe Edition]は聴かれました…

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