この「MUSIC IS MY DESIRE」という曲は、PABLO MOSESの楽曲の中では珍しく、ちょっと洒落たエレピ?が導入されているのが非常に大きな特徴だ。時折入るチープなオルガンの音も効果的。ミディアムテンポで流暢なリズムにのって歌われるのは、あくまでも体温の低い淡々としたPABLO MOSES節だ。これが見事にマッチして摩訶不思議で、かつ絶妙な音空間を作り出している。もちろん私の大好きな曲で、全レゲエのベスト20に必ず入る。(だけどこの曲を他の方が褒めてるのを見たことは皆無。なんで?)とりあえず私からこの曲に岩谷宏レゲエ賞を差し上げておくことにしよう。
11.SCRITTI POLITTI / ASYLUMS IN JERUSALEM '82 (Rough Trade 111P)
このサイトのタイトルに「ポップ」が付く項目で取り上げる音楽はどれも「明るく元気で高揚感があって弾けてて、、、」というサウンド面での共通点があるがこの曲は例外的にサウンド的にはさほど「ポップ」ではない。ではこの曲の何がポップかというと岩谷宏言うところの思想/感覚的な部分でポップなのだ。このレゲエ調の曲で聴かれる変テコで人を小馬鹿にしたようなベースラインが象徴するように歌詞でも人をとことんオチョクったところがポップだ。「LET HIM POP」なんてセリフも出てくるしね。
例えばネオアコで言うと、AZTEC CAMERAのRODDY FRAMEは19歳の最初のアルバムで衆目一致の生涯最高の傑作「HIGH LAND , HARD RAIN」を発表した。翌20歳で「KNIFE」を発表。この時点で弾けるような若さのエキスは既にほぼ消滅。23歳「LOVE」の発表で、この辺りからはもう若さのエキスのかげりも無く、フリッパーズギター言う所の「お付き合い、惰性で」聴き続けた方が多かろう。ネオアコ系バンドのほとんどはほぼ例外なく似たような経緯を辿っている。(イギリス人の老け込み方は凄く早い。)
私の場合「ポップさ」に若さのエキスを求める度合いが大きいからこれは極論と言えるかもしれないが、自分の中の「AZTEC CAMERA / RODDY FRAME」は19歳、せいぜい20歳で死んでしまった訳である。23歳以降は、いくら生きていられても(作品を発表され続けても)基本的には無関心、つまり実質的に「死」んでしまったのだ。
逆に言うと「19歳のAZTEC CAMERA / RODDY FRAME」は永遠に私の中に(今もこうして)しっかりと生きているのだから、彼の肉体的死、時間的死、歴史的死に頓着する/惜しんだり悲しんだりする/必要は全く無い訳である。