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2012年05月25日
『こころ』 夏目漱石
カテゴリ:
日々の生活・育児
学生の時に読んだ時には歯牙にもかけなかったこの小説。
40才を越えてしばらく経った今、読み返してみると、これがなかなか面白い。
なんというか、スピードの遅さにホッとするのです(笑)。
声が聞きたいと思えばどちらかの家に行き、主な通信手段は手紙。うんと急いで電報。いいじゃんか、それで。ケータイとかスマホとか、いらないんじゃないかなあ。などと思ったりして。
さて、学生の時に浮かばなかった疑問がひとつあります。
先生、あなた本当に死んだのですか?
・・・というもの。
ざっと「こころ 漱石 先生は死んだか?」かなにかでググッた結果を見たのですが、これについて書いているレビューはありませんでした。
私は書評などは読まないほうなので、既出の疑問でしたらお許しください。というか、それについて考察している文があれば教えてください。
なにしろ漱石本人も「明治の精神に殉ずる死を描く」のが云々と言っているようなので、これについては「遺書が『私』にわたった頃には死んでいる」で間違いないのでしょうか。
先生の、この性格。どこまでも、Kの対極として描かれているこの性格。汽車に乗って父の死を観取りに行っているずいぶん年下の友人に、「会いたい」という電報をうち、次の日に「やっぱいい」と又電報を打つ、この性格。
「死にます」と、中編小説の半分にも及ぶような遺書を書いて送って、本当に死ねるのでしょうか。この遺書に対する「私」の感想、絶対気になってるよね?そうだよね?
先生は、「30年以上死への情熱を失わなかった」乃木大将に、自分を重ねたらしいです。乃木大将が「明治天皇が死ぬなというから」死を決心しながら30年も生きながらえ、「明治天皇が死んだから」と自死することに触発されて、「死んだように生きる」ことから「本当に自分も死ぬ」にシフトしちゃう先生。過去を告白する遺書を年下の友人に送る先生。正直言って、「女々しい」し、「年の割に幼い」と思います。岡田有希子というアイドルが自殺したあと、若者の自殺が相次ぎましたが、あれを思い出します。
「明治の精神」というやつ。注意深く読まないと、それを代表しているのが「先生」なのか、「k」なのか。わからないのでしょう。今回、読み流しただけで、反芻しても、いまいちはっきりしません。
先生は、自分がKに劣っていることを自覚しています。そこに、嫉妬や羨望がないわけがない。いろいろ世話を焼いて、Kの役にたって、自分がリア充であることを誇示して、なんとか優位に立とうとじたばたしているところはかわいらしくさえあります。
こんな先生が、何十年経ったからといって、自殺などできるのでしょうか。「私」が先生の遺体と対面したり、先生の妻とそれについて話す場面などは描かれていません。ストーリー自体は、遺書をもらって、死の床にある父を放り出して電車に飛び乗る、そこで終わっているのです。
私(ねねごんず)はね、先生は自分の頚動脈を切るような度胸の持ち主ではないと思いますよ(って遺書にもそんな死にかたはしないみたいなことは書いてますが)。きっとね、今日死のう、今日こそ死のうと思いながら、これから先もずいぶん長く生きていくと思いますよ。
こんな男のどこが魅力的なのかと思いますよねえ、ところが「私」という、先生のことが大好きな男に前半を語らせたばっかりに、読んでいる私まで先生に好意をもってしまう。その筆力に、感動いたしました。
来年も、また読んでみよう。
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最終更新日 2012年05月25日 22時32分16秒
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