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半二はふと、己の手をみた。指を動かしてみた。
握っていない筆がみえた気がした。
まだ書かれていない文字がみえた気がした。
わしはわしのためだけに浄瑠璃を書いてんのやない、とふいに半二は思う。たとえばわしは、治蔵を背負って書いとんのや。いや、それだけやない。それをいうなら、治蔵だけやのうて、筆を握って死んでった大勢の者らの念をすべて背負って書いとんのやないか。
ひょっとして浄瑠璃を書くとは、そういうことなのではないだろうか、と半二は思う。
この世もあの世も渾然となった渦のなかで、この人の世の凄まじさを詞章にしていく。
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