320life

プロフィール

ノマ@320life

フォローする

サイド自由欄

読書記録まとめ
2023年に読んだ本292冊まとめ/ベスト10冊
2022年に読んだ本336冊まとめ/ベスト10冊
2021年に読んだ本310冊まとめ/ベスト10冊
2020年に読んだ本255冊まとめ/ベスト10冊
2019年に読んだ本213冊まとめ/ベスト10冊

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

カテゴリ

【読書】その他ビジュアルブック

(11)

< 新しい記事

新着記事一覧(全2155件)

過去の記事 >

2021.04.09

053.彼女の名前は [ チョ　ナムジュ ]

テーマ：読書(8467)

カテゴリ：【読書】未分類

本のタイトル・作者

彼女の名前は [ チョ　ナムジュ ]
"그녀 이름은" [조남주]

本の目次・あらすじ

第１章　それでもずっと、ときめきつづけていられる
（하지만 계속 두근거릴 줄 아는）
　二番目の人
　ナリと私
　彼女へ
　若い娘がひとりで

　大観覧車
　公園墓場にて

第２章　私はまだ若く、この闘いは終わっていない
（나는 여전히 젊고 아직 싸움은 끝나지 않았다）
　離婚日記
　結婚日記
　インタビューー妊婦の話
　ママは一年生
　運のよい日
　彼女たちの老後対策
　声を探して

第３章　はあちゃん、けんきでね
（애하머니 겅강하새요）
　調理師のお弁当
　運転の達人
　２０ねんつとめました

　ジンミョンのお父さんへ
　ばあちゃんの誓い

第４章　たくさんの先が見えない道のなかかすかな光を私は追いかけてる
（수많은 알 수 없는 길 속에 희미한 빛을 난 쫓아가）
　浪人の弁
　また巡り逢えた世界
　老いた樫の木の歌
　長女ウンミ
　公転周期
　十一歳の出馬宣言
　エピローグ：７８年生まれ、

引用

私だってそうだったんだよ。あたしたちの頃はもっとひどかったんだから。そんなことを言う先輩にはなるまいと、心に誓った。でもそれだけでは足りない。言ってはいけないことを言わない人で終わらず、言うべきことを言える人にならなければ。自分が今日のみ込んだ言葉、自分しか言ってあげられない言葉について、考えている。

感想

2021年読書：053冊目
おすすめ度：★★★

『82年生まれ、キム・ジヨン』の作家の新作。
ずっと読みたいと思っていたけど後回しになっていて、ようやく読めた。
（余談だが、母に勧めたら母も読んでいて、たまたま叔母も同じタイミングで読んでいた。）

たくさんの女たちの物語。
キム・ジヨンが鏡に映った自分の、友達の、母の、祖母の物語だったとしたら、これはそれぞれに名前のある「彼女たちの」物語。
と、同時に、韓国の現代史のようでもある。
隣国で、近年のニュースで知っていた事象が、韓国ではどのように受け止められ、人々に影響を与えていたのか、はじめて知った。

けれど同時に、どこでも起こってきたこと、起きていること。
色んな国で生理用品の無償化が議論されてきていて、私ははじめそのことが驚きだったのだけれど、この本に「貧しくて生理用品が買えないから」と学校に来ない女子学生が出てくる（「公転周期」）。
彼女は素っ裸で、溝にまたがっているのだ。生理の間中。学校に行けず。
ねえ、そんなこと、信じられる？
私はこれからずっと、彼女のことを思いだすのだろうな。
生理用品を買うたびに、生理が来るたびに。
世界中のどこかで、きっと、生理が来ることを、女であることを、死ぬほど呪っている子がいるんだ。
貧しくて、生理用品が買えないから。

そして、「２０ねんつとめました」を読んで、最近の会話を思いだした。
会社のビルの清掃に入ってくれている彼女。

「この間ね、給湯室を掃除に行ったら、社員の人がいてね。『そんなの掃除のおばちゃんにさせたらいいよ』って言ってたの。ねえ、私はそこにいたのよ。私にだって名前があるのよ」

彼女は目に涙を浮かべて言う。
会社からたった２枚しか支給されない、色褪せて擦り切れた制服。
男女兼用だから、裾が余るのだ。―――私の作業着と同じ。
彼女は、マスカラが滲んだ目元を瞬かせる。

「４月から、同じ仕事を３０分短くしてやりなさいと言われているんだけど、どうしろって言うのよ？仕事を取りたいからって安く取って来て、現場にはその分の給料払わないから同じ仕事を短い時間でやれって」

私は黙り込む。その仕事を彼女が派遣される会社へ安く買い叩いたのは、私の会社だ。
同じところで働いていて、同じ毎日を生きていて、顔を合わせて。

ねえ、頑張ろうね。

彼女は言う。

私たち、頑張ろうね。

女同士にしか分からない連帯感が、私を泣きたくさせる。
彼女の名前を、私は呼びたい。おはようございます、という時に。
それが私に出来る、安っぽい抵抗だから。