北朝鮮の船が波の合間に小さく見えてきた。
「皆準備はできているか!」
組長のだみ声が船全体にこだました。
今回の取引はうちの組の全てをかけている、失敗は許されない。
先方の船が20メートルまで近づいたとき雲の切れ間からキラリと光が見えた気がした、太陽の光だった。
密輸入は前準備から相当の時間とお金をかけ信頼できる相手を探し絶対に証拠を残さないことが鍵だ、その計画の骨子は海斗に任されていた。
元海上保安官として何をやってはいけないのか事前に打ち合わせは出来ていた。
積み荷を移し替えるとき、そしてそれを陸揚げするとき何の証拠も残してはいけない。
そのために岸壁から陸揚げせず寄港地が近づいたらまたわざわざ小さなボート3隻に荷物を積みかえ港から遠く離れた砂浜の入り江に入港させ港では事前に用意した魚を陸揚げさせるという念の入れようだ。
万が一港で海保に発見されてもただの漁船の漁ということになる。
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