愛 こ と ば・心 の 散 歩 路

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2008.07.17
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「小学校三年の時に難病を

 患ってね。2年休んだの。

 …………それで」

「……知らなかったな。

 麻チャンも呼び捨てに

 してたし……」

「だって同級生だったし、付き合いだした後で

 知ったことだからね……歳のこと……」

「ふーん、そうか………知らなかった。……で、どうなった?

 ……それから……」

「10年近い歳月が流れたのよ………サラサラと」

「……10年……。……10年か。…………彼女は?」

「ずっと、来てた。遊びにね………月に1、2回かな」

「ずっと、独身か?……へえー、それもまた、珍しいな」

「娘のことも可愛がってくれたし……。なついてもいたし……。

 けっこう…楽しかったよ……」

「…………」

「………みんなで一緒に食事したりしてさ……」

「それじゃ、まるで、親戚付き合いみたいなもんだな……」

「学生時代の彼女と彼との関係なんて、すっかり忘れてたよ」

「そりゃーそうだろうな。10年も経てば……それに、

 元々プラトニックだし……」

「イヤ!結局は、私……試されたんだけどね……」

「何を……?」

「私の気持をよ。……彼への……」

「そんな事はお前、夫婦の間の問題であって、他人が、

 とやかく言う事じゃない……大きなお世話だろうが………?」

「だって、スキがあれば取って代わろうって………」

「何だって!……まさか、まさかそこまでは無いだろうが?」

「イヤ、彼女が、自分でそう言ったんだから……」

「ほんとか?……………試されたって何よ?」

「3年前にね、告白したのよ、彼女が………」

「……………」


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「ダンナと、又、付き合いだしてるって…………」

「彼女が、そう言ったのか?……麻チャンに直接……」

「ウン、彼が出張で居ない時、ウチに泊りに来ててね……」

「………フーン、………で」

「ずっと好きだったって……待ってたって……」

「何を……?」

「彼が、一人になるのをよ……」

「なんだ?……それ」

「それって二人が別れるか、私が死ぬかでしょう……?」

「………だな」

「ホント、頭にくるよね。そしてね、くれって言うのよ………」

「何を?」

「彼をよ。……私に言うのよ……俊さんどう思う?」

「メチャクチャな、話だな………」

「……でしょ」

「……しかし、凄い話だな」

「年を重ねてきて、……彼女、待てなくなったみたい」

「………ウーン。……人のダンナさんをずっと慕ってた?」

「お腹に、子供もいるって言うし…………」

「何だって?……穏やかじゃないな。オイ」

「もう、カーッとなってねぇ……。当たり前でしょう?」

「そりゃー、そうだ!」

「その辺にあったものを、全部投げつけてやった」

「…………ショックだもんな」

「彼女、何と言ったと思う?…………その時」

「ウン…?何て、言ったんだ?」

「『あなたは彼を愛していない』って………」

「……?」

「『愛していれば自分のこんな言葉を、信じるはずがない』

 って……そう言うのよ」

「うーん………そんな事を……」

「私、愛してたけどなぁ……すごく……。

 でも確かにすぐ疑った……それも事実…」

「あーあ………。しかし、麻チャンじゃ仕方ないか………」

「何よ!その言い方………」

「ヘヘヘヘッ………まぁ、怒るな怒るな…………でっ?」

「『自分の方が、数段彼を愛しているから……自分が一緒に

 住むべきだ』って……」

「そりゃー又、勝手な理屈だ……」



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「あーあ、…………もう終わったこと……終わったこと……」

「……しかし、非常識な話だな……」

「結局、私って、彼女に言われた通りの女だったかもね……」

「しかし…………、しかしだなあ……」

「………」

「かと言って、彼女の方が彼を愛してるって事になるか?」

「『恥も外聞も無く10年間通い詰めた』って……泣くのよ」

「………」

「まいったわ、その時は…………」

「お腹の赤ちゃんってのは、嘘だろう?」

「………ウソだったみたい……」

「しかし、肝心のダンナとは?

 ……当然話したんだろう……?」

「私、彼女より、ダンナを許せなかったから、……終わりよ」

「彼女が嘘ついてるって思わなかったのか?……嘘だろうが?」

「彼女、迫力あったもんね。嘘なんて思えない……その時は」

「……で、ダンナを問い詰めたのか?」

「許せないよ。だって、私を裏切ったからね……この私をよ」

「白状したか?………どっちだ?」

「ワタシを裏切ったのよ……このワタシをよ………俊サン!」

「………………白状……するわけないか?」

「しらばっくれて最後まで白状しなかった……」

「潔白だったんだろう?」

「今、思えばね…………後で分かったこと」

「なんで、そうなる?時間をかけて話し合わなかったのか?」

「子供連れて、さっさと実家に帰っちゃったし…………」

「子供くらい、自分で育てるって思ったんだな? お前」

「……!」

「ハン、……図星か?」

「仕事持ってる女の弱点かもね………」



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「いくら何でも、ちょっと短兵急に過ぎる感じだなあ……」

「そして、離婚届送り付けたのよ。………許せんかったもん」

「彼は、お前のこと大事に考えてたと思うけどなぁ……」

「じゃー、私が彼を大事に思ってなかったってこと?」

「彼の方の気持には負けてたんじゃないか?」

「イヤ!そんなことないよ、アイツだって、ホントに

 大事なら……」

「……何だって?」

「ハンコ押さなきゃいいのよ。何年だって…………」

「押して欲しくなかったのか……?」

「……ウン、許せなかったけどね……」

「結果、角井田さんに負けたか…………」

「イヤ!彼は断然私の方を愛してくれてた。

 比べ物にならない…………」

「じゃー、彼に対する熱さは、角井田さんの勝ちで、

 麻チャンの負けってことか?」

「イヤ!負けてないと思うよ………………」

「お前には悪いが………執着心では負けてるな………」

「彼にも、気長に考えて欲しかった……我ままかね……?」


「当然、彼、実家に訪ねて来たろう?……潔白なんだから」

「うん、でもウチの父さんがね…………」

「ああ、あの親父さん……な。分かるよ………門前払いか」

「父さんの方が、私より怒ってたからね………」

「あの性格だからな……一本気っていうか………なっ」

「父さん傷ついてた。私、父の自慢だったしね……」

「そりゃそうだ。一人娘で秀才で、人気者とくりゃー……」

「私が言うのも何だけど、いいお父さんよ。……ねっ」

「日にちが経って……冷静に考えて……、何とかならなかっ

 たのか?」


「人を信じるって、どういうことだろうね………」

「少なくとも結婚した相手だぞ。それに子供もいる………」

「……なんかね、怒りの方が、どうにも納まらなかったのよ」

「麻チャンらしい気もするが、……らしくない感じも

 するなぁ」

「イヤ!相手が、相手だったからねぇ…………まっ、

 私も未熟よ」

「ふぅ………未熟で済むか……全く」



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「飼い犬に手を噛まれるって…………ね……フゥ…」

「そりゃー、言い過ぎじゃないか?……角井田さんに……」

「あっ!俊さん!……彼女の味方なんだ!……ひどい」

「まぁ、まぁ……、考え様によっちゃー彼氏も被害者かもな」

「何度も実家に訪ねて来て、………最後の方は、少し怒って

 たみたい……」

「自分を信じない麻チャンに……だろう?……悲しいよ」

「…………………で、受理ね。半年過ぎてたかな……」

「あーあ…………。淋しいなぁ……」

「その後、二年くらいしてかな……。あの二人結婚したのよ」

「……なんか、複雑だな……」

「……」

「でも、角井田さんって、恐いなぁ……」

「一途ってんでしょう……?真似できないわ……」

「できない、できない……お前には。…………プライドが

 邪魔だろう……?」

「プライドだけかなぁ……わかんないよ」

「それにしても、案外、さっさと結婚しちゃったんだな……。

 ………ふたり」

「ウン、結婚したって聞いても、もう何とも思わなかった

 けどね……その時は、もう……」

「まあ、無理するなよ………その後、向こうのふたりは?」

「………淡々とやってるみたいね。………興味ないけど」


         <続>





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最終更新日  2008.07.21 12:59:50
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