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「あのクッションテクノロジーがローカットに」。まるでスクーターに750CCのエンジンを積むような興奮と大きな期待をもって、AIR JORDAN 19のローカットを待っていたファン(私もその1人)は、このシューズのプロファイルに大きく失望したに違いない。ダブルスタックAIRソールが無意味に分厚いPhylonに。申し訳なさそうにデスクの上で批評を待つ偽物のスーパーカーを前にして、そいつにどんな価値を見つける事ができようか?正直、この夏はこのシューズに決めていた。それだけに、裏切られた期待はJORDANBRAND(以後JB)への失望へ。。。かなり残念な結果となりそうだが、何時ものようにいってみよう。まずは一番の問題なクッションの入れ替え事件から。
今回のリリースで、誰もが期待していたのは、ハイカットで採用されていたフルレングスZOOM+ダブルスタックAIR@ヒールだろう。19を経験済みの人なら分かると思うが、18のダブルスタックよりもさらに高度にチューニングされた19(ハイカット)のクッションは、現存する全てのシューズの中で最高のパフォーマンスを持つ。そんな最高のエンジンを軽量のローカットに積み込んだらどんな風になるのだろう。誰もがワクワクする夢がそこにあった。そして、サンプル写真に写っていたハイカットとほぼ同じ外観を持つローカットのミドルソールを見た私達は、現実のものとなるスーパーカーに胸を踊らしていたわけである。「早く試してみたい」。と。しかし、私達の期待は完全に裏切られた。JBがAIRJORDAN 19 LOWに搭載したのは、必要以上に分厚いPhylonで包み込まれたフルレングスAIRユニット。スペックを聞いただけで、大きな期待はどこかに飛んでいった。
同じ19の名前をもつハイカットとローカットだが、クッションには名前が一緒なのが失礼な位の違いがある。その違いを具体的に表現するなら、ハイカットのフォアフットに力を入れれば、突き上げるような反発性を感じる反面、ローカットで力を入れても決して届く事のない距離を足下に感じる。ハイカットのリアフットが着地時のショックを素早く吸収し、次の動きへスムーズなトランジションを施してくれるところ、ローカットではPhylonの反応が鈍く、鈍臭ささえも感じるクッションがそこにある。あまりにも厚すぎるローのPhylonの層による接地感覚への影響もそこには存在し、ハイカットでは踏み込めばフロアを感じる事ができたわけだが、ローカットではそんな感覚は一切ない。もう一つ付け足せば、Phylonの層が厚すぎる事で、ローカットの靴底には、十分な柔軟性が確保されていない。よって、ローカットを好むスピードプレーヤーに必要な「走り易さ」という点についても、このシューズは対応できていない事が分かる。
ハイとロー。名前だけ聞けば、カットだけの違いに聞こえるかもしれないが、クッションだけ見ても両者の間には2世代位のギャップである。(※そうは言ってもこのシューズのクッションは平均的と言えるし、同程度のクッションにTEAMDEUCE-TREYが存在する。あくまで、あまりにも良すぎたハイカットと比べた場合に見劣りしてしまったという事と、同じシューズであるべきところをダウングレードまでしたJBの行動についての話である)

クッション以外にも、このローカットには残念な点がある。実はバスケットボールシューズとしてこのシューズを見た場合、致命的な欠点がヒールカップにある事だ。最近のバスケットボールシューズ見ると分かるが、ほとんどのシューズの踵付近にはかなりの補強が施されている事に気付くはずだ。これは、ヒールカップと呼ばれるもので、激しい動きの中で、足が変な角度に屈折する事を防ぐものである。怪我が心配なプレーヤーなどでは、足首周りのカットの高さに気がとられがちだが、実は、このヒールカップによる足のポジショニングの安定化のほうが、プレーヤーの怪我予防には効果的だったりする。
しかし実際はどうだろう。AIR JORDAN 19 ローカットのヒール部分に、ヒールカップはほとんど存在しない。弱い作りながらも、縦の動きには対応できそうな雰囲気はあるが、横の動きに対しては十分な強さがない事が見て取れる。これがどういう意味を持つかというと、例えば、あなたがルーズボールを追っていて、横に大きくストップしようとする時、グリップはストップするのだが、衝撃を押さえ込めないシューズのヒール部分が大きく歪み、それにあわせて足の角度が著しく曲がってしまう事になるだろう。その時の足の角度とは、直角の時と比べ、力の入れ難い角度になってしまうのだ。疲れていない時などは、このような状態が生じても筋肉でカバーできるが、疲れてきて、筋力がカバーしきれなくなった時に、怪我の可能性を大きくしてしまう。ローカットにはサポートの弱さがついてまわる。それを補う為にもヒールカップが必要なわけで、それに対応していないAIRJORDAN 19のローカットは、バスケットボールシューズとしては疑問符が付きまとう。

既に十分過ぎる駄目だしをしたが、もう二点ほどこのシューズへの不満をぶつけさせてもらおう。まずは通気性。ローカットのタン部分には、ハイカットのフロントカバーに使われたものと同じ素材(TechFlex)が使われている。効果は分かり難い実装ではあるが、19のメーンキャラの蛇(BlackMamba)をイメージする為のパーツだから、ローカットにも必要だったのかもしれない。この素材は、軽量だが強度のあるプラスチックホースが編み上げになっているものなので、風通しはとても良い(はずだ)。このローカットを夏の用途を考えていたところもあるので、かなり通性が良く快適なシューズだと思い込んでいた。
しかし、実際には、TechFlexは風通しが良くても、もう一つの層になっているブーツ構造(足の前半分を包む柔軟性のある素材)が空気の流れをシャットアウトしている為、風通しは決してよい部類のシューズではない。テストではソックスをはいていたので、ソックスとこのインナーが重なる事で、蒸れる易い環境になっていたとも思えたが、素足で履いたとしても、同じ事になるだろう。機能性も、デザイン的なインパクトもそれほどないパーツをつけたAIRJORDAN。適当だったんですか?と聞いてみたいものだ。通気性を高める為のTechFlexは、確実に履き心地(快適さ)に直結しているべきだろう。
履き心地と言えば、ハイカットのレビュー時に、19は本当に高級感溢れる履き心地だといったが、この部分についてもローカットではダウングレードされている。問題なのは、リア半分の素材だ。ハイカットでは、とても柔らかなメモリーフォームがその快適な履き心地を実現していた。あまりに柔らく強度はないものの、ストラップバンドによってサポート機能を実現していたので、快適さとサポート性が一足のシューズで共存できたわけである。しかし、このローカットではストラップバンドの手法は使えるわけもなく、その結果が、このあまりにも一般的なヒール周りの作りこみになっている。この作りのレベルはナイキが販売する最も安いラインアップのものと遜色なく、AIRJORDANシリーズに使われるべき代物ではないだろう。昨年販売されたAIR JORDAN 18のローカットと比べれてみれば、その安っぽさは浮き彫りになる事だろう。誰がデザインしたのだろうか?クオリティの低さがあまりにも多く目につく。

一応、このシューズにも未来へ繋がりそうなプチ発明があると思われる。その一つがTPUパーツ(柔軟性と強度を兼ね備えた素材)を使ったシューレースホール。とてもホールド力がある。AIR
JORDANのいくつかには、シューズの紐が簡単に解けて、何回も結びなおす必要があるものがある。あまりシューズ購入の際に気を付ける部分でもなく、買った後に面倒な事に気付くポイントだ。その点、このシューズではその心配はいらない。あまりにも地味な利点で、声高には叫ぶものでもないが合...
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