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2005年12月20日
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カテゴリ: 廃線探訪の旅.







7日の夜の天気予報で「箱根で雪が降り、チェーン規制の道路がある」という内容のことを告げているので一瞬不安になった。箱根で大雪のときは奥秩父でもかなり雪が降ることが多いのだ。しかし行ってみなければわからないと強く思い、その夜は酒も呑まず翌朝に備えた。



8日は4時に起きる。そそくさと準備をして5時前には出発した。まだ暗いがクルマはそこそこ走っている。国道299号の正丸トンネルを越え、秩父で国道140号に入り奥秩父を目指す。秩父付近に雪はないのだが、奥秩父は天気が全く違うので油断できない。しかし自分でどうするということもできないので、やはり行ってみなければ・・・と思いつつNHKのAMを聴いていたらいつもの「ラジオ体操の時間」になった。あーたーらしーぃあーさっがきったっというこの歌を聴くのは、早朝にクルマを走らせなければならない山に向かうときだけなので、まあなんとなくこういうときにいつも聴いているという安心感がある。



しかし奥秩父の山が見えてくるにつれ、その気分はどんどんと沈んだ。あまりにも山が白いのだ。



やや呆然としつつ秩父湖(二瀬ダム)の堤上を走る道をずんずんと進み、埼玉大学の寮手前にあるトイレ前駐車場が空いていることを確認し大洞(おおぼら)林道へと車を進める。この林道に入ると解氷剤である塩カルは撒かれていないので完全なアイスバーンだ。雪もきちんと積もっていて山の木々は雪を着けており、その景色はここが同じ埼玉県か、とつい口に出してしまいそうなくらいの12月上旬としては信じられないものであった。



林道の途中にある駐車スペースにクルマを止め、カセットコンロでお湯を沸かす。最近のカセットコンロは火力が強いので思ったよりもはやくお湯が沸いた。途中で拠ったコンビニで予め水と食料は買っておいたのだ。おもむろにカップヌードルのカレー味を取り出しじゃあじゃあとお湯を注ぐと湯気がもの凄い。クルマの温度計が正しければここは氷点下3℃だからそれも当然だろうなあ。何しろ周辺全部雪景色である。それにしても我がエスクードはこんな道なのにノーマルタイヤでも走ってしまうのだからまったく大したものだ、と感心しつつハフハフとカップヌードルを貪り食う。持ち上げた麺はすぐ冷めてしまうがスープは最後まで温かい。ところで、こういうときどうしてカレー味というのが似合うのだろうか。うーむ。



少しクルマのなかで寝て起きたら9時を過ぎていた。だが景色は相変わらずの雪だ。私は雪山登山の経験というものが全くなく、よくモノの本で「雪山は素人が入っちゃいけない」という言葉を目にするものだからかなり深刻に悩んだ。雪の怖さを身体で覚えている北海道生まれとしての本能的な怖さ、というものも感じていたからだ。



しかし最後は「まあなんとかなるだろう」というのと行けるところまでは行ってみよう、というかなり安易な決心を根拠に埼玉大学の寮近くにあるトイレ前駐車場にクルマを止め、かなり長い吊り橋を渡って山に入った。山の下のほうは雪が積もっていないので結構進んでいける感じがする。そこで最初の難関である「分岐点」を注意深く確認することにした。前回この山に入ったとき、その分岐点が見つからないがためにとんでもないことになったのだ。あのときはかなり本気で遭難を覚悟した。ガレた谷を直登すると降りられなくなる場合がある、ということを身をもって経験した。



だから今回のなかで最も重要な点がこの「分岐点を探す」ということだったのだ。その分岐した方向こそが今回ここまで行ければ成功だろう、という箇所である電波反射板までの道程へと繋がっている筈なのである。電波反射板というのはその名の通り巨大な反射板で、その姿は広告を貼っていない看板のようなカタチをしている。秩父湖に架かる吊り橋からもそれは確認できるのだが、何のために設置されているのかよくわからない。おそらくはダムに関係するものだろう。ネット上での情報では、その反射板地点が標高1,330mで、そこからは稜線を辿ってほぼ水平に道が続いており、それが森林軌道跡に繋がっているらしい。つまりそこまでの高度を稼げればあとはナントカなる、と私は判断していた。軌道跡であれば高低差はあまりないはずだからだ。







それにしてもそのルートはかなり登りがキツい。登山ルートというより林業用の作業道のようだ。



高度は殆ど無駄なく稼いでいるのも、林業用のルートと考えれば納得がいく。登山を愉しむためのものではないから、確かにこれでいいのだ。それにしても間伐された杉の量がもの凄い。植林した場合、最後に木材として使うのは最初に植えた木の3分の1程度でしかない、ということを何かの本で読んだ。そうか、3分の2はこうして切られてしまうのだな…とやや虚しい気分になる。昔ならそれでも炭などに加工して使ってのだろうが、今はどうなんだろう。



かなり深い森で視界はあまりよくない。すぐ隣にあるはずの秩父湖はすっかり影も形もみえなくなってしまった。しかしそれでも何とか届いてくる木漏れ日を通して、まるで雪が降っているような景色になってきた。樹木の上のほうに積もっている雪が少しずつ落ちてきているのだ。気温が低いので融けるでもなく、あくまで雪としてはらはらと落ちてくるのであった。何だか実に文学的な風景であったが、写真は思ったように撮ることができなかった。暗い中での逆光という按配はコンパクトデジカメではカバーしきれない世界のようだ。



やがて尾根の鞍部に到達することができた。この鞍部を境に和名倉側は杉、秩父湖側は広葉樹という、本当に線を引いたように真っ二つの森になっていてかなり驚いた。



しかし少しずつ登っていくにつれ、その原因というものがピンと閃いた。つまりこの尾根の日陰になる側が植林され、日が当たる側はそのままになっているのだろう。杉などの針葉樹は直射日光が強く当たるところだと育ちが悪い。シイタケの栽培に適しているようなところがいいのだ。だからこんなことになったのだろう、とややあてずっぽうであるがそう感じた。



まあそんなことを考えつつも急登は続く。どんどん高度を上げるものだから、いつのまにか地面いっぱいに雪が積もっている景色になってしまった。ハヒハヒの連続登りでそういうことにすら気付かないのだ。これはちょっと危険だな、こういうときに変な方向に進んじゃうことがあるんだろうな、と思った私はとりあえず立ったまま休憩をとった。それにしても、もうとにかく一気に登っちゃうんだかんね、と道らしき筋がそう語っている。道らしき、というのは、ハッキリとした踏跡というものが雪によるものなのか、もともと人が殆ど入らないからかはわからないが、とにかくないのだ。



眼鏡が吐息でどんどん曇っていく。気温は相変わらずのようで、氷点下なものだから立ったままの休憩をちょっとしても忽ち服から冷えてくる。体の表面は汗をかいているものだから尚更体温が下がりやすいのだ。どうにも困った状況なのだがとにかく反射板まで行くしかない。



幸いにも先駆者がところどころに登山道の目印となるリボンを木につけていてくれるので、それを慎重に選んでいけばなんとか確実に進んでいる、という安心感がある。しかしなんとこのリボンが数箇所において、決定的な罠のような存在に化けているところがあったのだ。



それはある一点に立って、リボンが見当たらなくなってしまい、左右をかなり慎重に眺めた急登の途中だった。



なんと左右のどちらにもリボンが存在しているのである。右はやや登った位置、しかし道筋は不明瞭でその先はもうよくわからない状態。左はほぼ水平で道筋とハッキリわかるものがついている。僅かでも山を経験しているし、こういうときの山のなかにおける自分の位置に対する空間的認識について、私は動物的な勘があるのではないかと思うくらい鋭い。それが本当に一歩間違えると危機に直面する、という判断を下さなければならないときは特にだ。以前私は、あることによってこの自分の能力というか、判断力に気付いた。それが何かは書かないが、人間というのは臆病なくらいのほうがこういうとき生き永らえることができるのは間違いない。



私の直感はやや登っている「右」と判断した。









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最終更新日  2005年12月20日 17時08分23秒
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