
被災跡地に残っている木立のうち、
ざくろは強い。
子供の頃、
昔裏の家に住んでいたヒロボーの庭には、
ざくろの木があって、
ヒロボーは口の周りを赤くして、
ざくろの中身を食べていたのが、
とてもうらやましかった。
うらやましかったから、
なんと不思議な美しい果物だろうと、
羨望のイメージが自分の中で育って定着していた。
今でもなお、
ざくろという言葉の響きには、
幼き日の羨望が遠くに見えたりする。
でも後年、
ざくろの実を食べる機会があったときには、
なんだかフラれた気分になった。
おいしい食べ方や食材としての使い方はあるのだろうけれど、
ざくろジュースは健康食品のイメージだし、
案外染料にはいいのではと想像したりする。
それでもなお、
ざくろの木に実ってるのを見ると、
幼い頃の羨望の美しい中身が
特別に貴重なもののように感じている自分がいる。
The pomegranate is a special envy for me
in my early childhood.

秋の夜の灯り 26