また誕生日が来てしまった。
娘が抱負は?と言うので
もうその歳に溶け込もうと思うと言った。
ここ数年、
次第に年齢を許し始めていた。
長い間、年齢を意識してもそれは自分らしくはなかった。
今も自分らしくはないとも思うけれど、
どうもそうでもなさそうだという気になってきた。
レッテルは貼られたくはないけれど、
降参し始めたのだ。
国際級の都市型ホテルが
都心ではなく郊外にあるのが好きだ。
特に昼間はゆったりした時間が流れている。




父が生きた時間まであと10年というところに来た。

父の場合はこの歳でもまだ企業から受託して
その会社の社員教育を引き受けていた。
だから僕は負けている。
父はあと2年ほどで仕事をやめたけれど、
それから8年生きることが出来た。

このホテルのあるところは
元々はこの白鹿の酒造会社の学校法人の高校だった。
僕はその高校に通っていた。
その学校で父は終戦までの若い時期教師をしていた。
学校の傍には甲子園球場があり、
父と母は甲子園休場の近くに住んでいて職場も近かったわけだ。
僕はその時生まれている。
そういうわけもあって、
このホテルで時間を過ごしていると、
時の奥行きが続いていて
心身がリラックスするのだ。
被災地の苦労を思うと申し訳ない限りだけれど、
身の丈以上のものは望まない心境を与えてもらっている。
歳に溶け込もうというのは
身の程を知り、ありのままでいいということでもある。