22の時、会社人という社会人になった。
それから29年の間勤務した会社が大丸だった。
50になったとき転職したが、
退職願は早期定年退職制開始の初日だった。
そのため、正規の定年退職者扱いなのだ。
そのご利益で昨夜、
すでに閉店している心斎橋店の見納めの機会があった。
僕は愛社心には欠けるところがあったけれど、
このこの建物は大好きで愛着が深かった。
会社の代表イメージであるこの建物のために、
愛社心も支えられたとおもうぐらいだ。
1920年に」建てられているこれは、
国内にも数々の名作のあるウイリアム・ヴォーリズの作品だ。
関西学院や神戸女学院もそうだし、
教会関係はもちろんいっぱいある。
入社したその年、
まだ見習社員だったときに、
この中で火事があった。
後方部門のある階段付近だったが、
店内は消火活動で水浸しになり、
長い間火事のにおいがした。
未明の火事が沈下した頃に出勤して衝撃を受けた。
心が痛み、
僕の中では長年においは消えなかった。
昨夜売り場の商品もないフロアは、
初めて見た光景だった。
百貨店ならではの華やいだ演出の表舞台なのになにか奇妙な感じだった。
でも、
何もないのに往時の華美と優雅が残っている空間でもあった。
命と同じように、
たしかに
「有るものは無くなる。」
無くなる前に別れることができた短くて稀有なひとときだった。



