捨てようと思っていたポスティング印刷物に、
なにげなくまた視線がとまったとき、
@@@@生誕110年展という
@@@@に気が付いた。
60年近くも昔の、
家庭教師していたお宅の
画家の名前だった。
3人娘の長女がバイト先の友人だったため、
彼女の妹の家庭教師を頼まれたのだ。
家庭教師バイトは
それしかしていない。
男子兄弟だけだった僕は、
男子校ばかりだったし、
その三姉妹の記憶はよく残っている。
バイト帰りに一緒に歩いていて、
長い横断歩道を渡っているときに、
ちょうど会話の流れがそうなってしまって、
僕はその長女から正式なおつきあいをと
告げられている。
横断中だったから、
忘れもしないのだ。
まだそういう時代だった。
当時の僕は遠距離恋愛中で、
色よい返事はできなかった。
でもある晩、
その日は画伯は留守で、
家のアトリエで、
彼女は好きなレコードをかけた。
初めてのダンスを
僕はさせられている。
妹が終わって末妹も頼まれたとき、
僕は友人を紹介した。
僕は深刻に遠距離をしていたからだ。
3女はとても可愛いかった。
どういう断り方をしたのかは覚えていない。
可愛すぎるから気持ちが複雑で、
みたいなことを言ったように思う。
後年彼女は
JALに行ったはずだ。
そして、
その名前がとても好きだったので、
後年僕は娘の名前に拝借した。
娘はその名前を気に入ってくれている。
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生誕110年展には、
行くつもりだ。
誰にも合わないとは思うけれど、
誰かに会ったら、
どうしよう。