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2018.09.22
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カテゴリ: 自閉症関連



発達障害の当事者対談

「早稲田大学に入るよりコンビニバイトのほうが難しかった」



昨年からさまざまな場所で耳にするようになった「 発達障害 」というフレーズ。

その種類は主に以下の3つにまとめられる。



《発達障害の種類》

■ADHD(注意欠陥・多動性障害):失言やケアレスミスに悩まされる傾向がある。また、多動で落ち着きがなく、複数タスクをこなすことに困難を感じる。

■ASD(自閉スペクトラム症):独特のマイルールをもち、環境の変化や急な予定変更に合わせられない。言葉の裏の意味を読み取れず、冗談も通じないため人付き合いに支障をきたす。

■LD(学習障害):知的な障害はないにも関わらず、漢字の読み書きや簡単な暗算ができない。

 発達障害はこれまで未成年の問題だと思われてきた。しかし実際には大人になって社会人生活を送る人の中でも、その症状で苦しむ人は多いことが明らかになってきている。

 だが、実際にそんな“生きづらさ”を抱える当事者たちの生の声はなかなか聞こえてこない。

フリーライターの姫野桂氏が8月に上梓した

『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』

は、日本人の10人に1人が発達障害を抱えると言われながら、

その実態が見えない当事者たちの声を集めた証言録である。

 一方、自身も発達障害の当事者であり、

そのうえで「本当に役立つ」ライフハックを記した

『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』

がベストセラーになった借金玉氏。


発達障害を最前線で見守り続ける2人に、クロストークを展開してもらった。



◆「日本一意識が低い自己啓発書」が売れた理由

姫野:借金玉さんの著作はベストセラーになっていますね。

借金玉:ありがたいです。発達障害当事者に向けて書いたのですが、定型発達(発達障害ではない)の人にも読んでもらえた結果ですね。

姫野:そもそも、ここまでが定型発達でここからは発達障害という明確な基準がないですよね。それに職場や学校などで周りに「発達障害かもしれない?」と思うような人がいると、それを理解しようと思って読んでいることも多いかもしれませんね。

借金玉:私の本は「日本一意識が低い自己啓発書」を名乗ってるんですが、朝まったく起きられない人が起きるためのライフハックから語っている本って案外なかったんでしょうね。朝が苦手なのは発達障害者の特徴のひとつなので書こうと思ったんですけれども。私はもとより、周りにも発達障害をかかえる人が多いので、本を書く際のサンプルはたくさんありました。

姫野:借金玉さんは現在のご職業に就く前に、経営者をやられてましたよね。雇用主としても発達障害当事者と関わる機会はありましたか?

借金玉:ありましたね。何度教えても消費税の計算ができない人がいたときは困りました。計算の概念が理解できず、電卓を叩く順序が絶対に覚えられないんですよね。彼女のために、電卓を叩く順序を紙に書いて机に貼り付けてあげることでなんとか解決しました。

姫野:私も計算が苦手で、昔アルバイトでレジ打ちをしていたのですが、いつまで経っても要領が悪く、すぐに辞めてしまいました。

借金玉:私自身もコンビニ弁当工場のアルバイトをしていたときに、何度教えてもらっても、フライヤーを使って揚げ物を作ることができなかったことがあります。そのときは店長に「言いづらいんだけど、キミは知的障害者だと思うよ。僕が言わないと誰も言ってくれないだろうから言うけど」と言われましたよ(苦笑)。

私からしたら、早稲田大学に入学するよりも、コンビニバイトをマスターすることのほう難しいんですよね。それで心から敬意を評して「早稲田入るよりもコンビニバイトのほうが難しいんですよ。店長のこと本当尊敬します」って言っちゃって(笑)。あのときはこの言葉が皮肉に聞こえるってことも理解できなかったんですよね。



極端に空気が読めないのも 発達障害 の特徴ですが、長い時間をかけてだんだん人に失礼をしないようにできるようになりました。

◆発達障害者には営業職が向いている?

姫野:借金玉さんは現在、営業職に就かれています。借金玉さんの昔のエピソードからも伺えますが、取材で知り合った発達障害当事者の方々もコミュニケーションに苦手意識を覚えている人が多いですよね。それで会話が多くなる営業職を敬遠して事務職に就きたがる人が多かったのですが、借金玉さんは営業職に難しさを感じませんか?

借金玉:実は、営業職に向いている発達障害者が意外と少なくないと思います。成果型労働は、ゴールに至るプロセスで多少のミスをしても、結果さえ出せれば文句は言われない。だから、ケアレスミスが多いADHD(注意欠陥・多動性障害)の人や、上司などの指示に対して疑問を感じる傾向のあるASD(自閉スペクトラム症)の方にとって、自分のペースで働ける営業職は向いていることもあり得るんですよ。

姫野:営業職をやらず嫌いしている人は多いのでそのアドバイスは有益ですね。

借金玉:私は発達障害を持つ知人には「営業を怖がるな!」って言ってます。もちろん、発達障害にもさまざまなケースがあるので、「すべての発達障害者に営業が向いている」とは言えませんが、苦手意識は持たずにチャレンジしてみてもいいんじゃないかと思いますね。大体の人がいの一番に避ける業種でもありますし。

姫野:私は新卒で入った会社で3年間経理をやったんですが、本当にしんどかったんです。定時で帰れる仕事内容だったのに毎日ヘトヘトで、土日はずっと寝こんでいました。

借金玉:それはお疲れ様でした……その状態で3年も働いたら表彰ものですよ(笑)。私も銀行員をやっていた頃の土日は、月曜日が来ないことを祈りながら酒を飲むか、布団にくるまって延々と泣いてましたから。

この前、発達障害だと告白された勝間和代さんとの対談でも話しましたが、彼女は会計事務所を半年で退所したそうです。ADHDでケアレスミスの多い人やLD(学習障害)があって計算が苦手な人は、会計や経理はまったく向いてない。ただ、ADHDやASDと違ってLDは見逃されがちですよね。

姫野:LDなのに知的障害者だと誤解されて、職場や人間関係で悩んでいるというケースは多いですね。

◆そもそも世の中で言う「普通」ってなに?

借金玉:私も『発達障害の僕が「食える人」に変わった-すごい仕事術』の執筆にあたって当事者取材をしたのですが、本当に大変でした。途中で連絡がつかなくなるのはザラですし、取材相手に依存されてしまって困ってしまったこともあって。これだけバラエティに富んだ当事者たちに取材するのはしんどかったでしょう?

姫野:実は、それほど大変だとは感じませんでした。でも、精神的に辛くなったのはASD(自閉スペクトラム症)をかかえ、何度も転職を繰り返し、自殺を考えてしまった女性。彼女のお話にはかなり感情移入してしまいましたが、他の方については、ある程度の距離を保って、冷静に書けたかと思います。

借金玉:たしかに姫野さんの文章は淡々としていて当事者に寄り添いすぎず、描写に徹しています。そもそも、なぜこの本を書こうと思ったんですか?

姫野:近年、NHKの特集番組をはじめとして発達障害の話題を耳にすることが多くて、「私も発達障害なのかな?」とうっすら思ったのがきっかけです。今回の書籍の担当編集や友人にも「姫野さんは普通じゃない」と言われます。もちろん彼らはいい意味で言ってくれてるんですが、そもそも「普通ってなに?」っていう疑問もあって。だから、この言葉は帯にも入れてもらいました。


借金玉:僕も 発達障害 にまつわる本をいろいろ読んできましたが、姫野さんのようにイデオロギーや主張を省いて、事例紹介に徹した本はほかにないと思います。

姫野:東洋経済オンラインでの連載開始当初は発達障害についてほとんど知らなかったんです。勉強しながら取材を重ね、当事者の方々の生きづらさを理解したので、目の前の当事者の言葉を丁寧に聞きとることに集中できたんだと思います。

それでも、私は「自分は定型発達(発達障害ではないこと)」だと信じて疑いませんでした。だから、取材相手に対して心理的に距離があったように思います。それが結果として、淡々とした描写につながっているのかもしれません。

借金玉:そんな姫野さん自身もWAIS-Ⅲ(発達障害傾向の有無を調べるテスト)を受けて、その様子が著書に描かれていますね。このときの動揺も正直に書いてあって、これはすごいオチだなと思いました。

姫野:自分の“普通じゃない”部分が“発達障害”だと判定される可能性が現実的になると、さすがにうろたえてしまいました……。

借金玉:私は自分が発達障害だと知ったとき、驚かずに「まあ、そうだよな」と納得しました。おまけに悪いことに、当時はネット上には「あの偉人も発達障害だった!」みたいな偏りのあるポジティブ情報がけっこうあって、自分も成功者になれるかもと楽観していたくらいで(笑)。

姫野:たしかに、発達障害をアイデンティティにしている方は一定数いますよね。私は発達障害をアイデンティティにしちゃいけないなとすごく思います。

借金玉:その通りだと思う面はあります。でも、発達障害の概念を支えに生き延びている人もいるのも事実なので、一概には言えないんじゃないでしょうか。

姫野:当事者の方々を取材していて、よく出てきた議論が「発達障害は個性か、障害か」というものでした。発達障害を個性として生き延びている方もいれば、発達障害はあくまでも障害なので助けてほしいという方もいるのが現状で、難しい問題ですね。

借金玉:私はブログがバズって書籍化までされたので、「お前は発達障害じゃない、才能のある人間だ」って批判されることがあったんです。でも私は「発達障害はただの障害、役立つことはない」と言いたい。ブログにも書いたんですが、私にとって発達障害はツルハシなんです。穴を掘れって言われたら普通はスコップが欲しいじゃないですか、欲を言えばパワーショベルがもっといい。ところが、私はツルハシを渡されてしまった。ツルハシって硬い岩を削るときには便利だけれども、穴掘りにはスコップのほうが役立つじゃないですか。みんなはスコップもらってていいなって普通に思いますよ。

◆発達障害当事者は「みんな違って、みんなダメ」

姫野:発達障害当事者一人ひとりが抱えている症状や、それに伴う悩みもまた千差万別ですよね。

借金玉:私が知人の言葉を借りてよく言うのが「発達障害者、みんな違って、みんなダメ」ということです。発達障害には豊富なグラデーションとバリエーションがあります。職場の発達障害者のことを理解したいと思う定型発達の方は、発達障害を説明する書籍を読むよりも、その発達障害当事者のことをこれまで以上によく見てあげてほしい。ダメの種類は人それぞれ全然違うので。

姫野:そうですね。例えば、うつ病だと典型的な症状や原因があるはずですが、発達障害にはそれがない。また、ADHDやASD、LDを併存している方がほとんどで、ひとつの類型に当てはめることもできない。そのうえそれぞれの障害のレベルも異なってくるので、発達障害はとらえどころがない。

借金玉:私が『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』で気をつけたのは、なるべく多くの人にリーチするような仕事術を書くことでした。しかし私の書いたライフハックでも救われない人がいるのが現実です。姫野さんの本が素晴らしいのは、発達障害者の多様性をそのまま描いたところです。定型発達の方々も読み終わったとき、「発達障害って結局なんなのかわからない」という印象を抱くと思います。

姫野:「取材を通して発達障害についてどのような結論が出ましたか?」と質問されたことがあるのですが、発達障害というものがわからなくなったというのが、正直なところです。

借金玉:よくわからない、と素直に言えるような認識が広まることが重要だと思います。姫野さんの本に出てくる22人の当事者だけでも全然違いますよね。 類型・パターン化して結論を急がずに、一個人としてじっくり接することが、発達障害当事者の救いになるはずです。

姫野:そう言ってもらえると嬉しいです。




[livedoor NEWS]




コンビニは働きやすいようで、

多様性を求められるのでしょうね。 *ミ














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Last updated  2018.10.23 06:56:59
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