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2026.07.30
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カテゴリ: 学校生活




特別支援学校を廃止し、フルインクルーシブを実現するイタリア。
授業そのものを、多様な子どもが参加しやすい形に
【言語聴覚士 原先生が伝える世界のインクルーシブ教育】



イタリア共和国は、地中海に飛び出した長靴のような半島の国で、


そうして「多様な人びとがともに暮らしてきた」ことが、
イタリアのインクルーシブ教育の土台になっているように思います。



また、イタリアは、
キリスト教のカトリック文化が根強い社会であり、
カトリックの教えに由来する次のような思想が広く受け入れられ、
それが教育や福祉の根底にあります。

共通善:人格の尊重など、すべての人が尊厳を守られながら生きるための条件を保障しなくてはならない
連 帯:困難は個人の責任ではなく社会の課題として引き受けるものである

補完性原理:社会における主体は家族、地域、学校のような生活に近い単位であり、国家や自治体はそれを補い、支えるものである

参 加:家族、地域、学校のような生活に近い単位が、制度構築を含めた社会づくりに関わる

こうした価値観からするとイタリアが、
障害のある子どもを「分ける」のではなく、
共に学べるように環境の方を整えようという方向に進んだのは、
自然なことに思えます。

家族が社会を支える基礎的な単位として
重視されるのもイタリア社会の特徴です。

イタリアでは教育関連の様々な会議に保護者が参加しますが、
それはこの家族観と深く結びついています。

知識の暗記だけではない学校教育

学校制度にもこうした思想は滲みます。

イタリアの義務教育は小学校5年、中学校3年、
高校最初の2年を合わせた10年間で、公立学校が中心です。

学習では、知識の暗記だけではなく、
理解すること、使うこと、説明すること、
表現することが重視されます。

こうした教育観は
「多様な子どもが参加できる授業と環境をつくること」
をめざすインクルーシブ教育の下地になっています。

多様な子どもが参加しやすいイタリアの総合学習

イタリアのフルインクルーシブ教育においては
「授業そのものの作り方」も重要なポイントです。

イタリアの初等教育では、
教科ごとの講義型の授業と並んで、総合学習が重視されています。

例えば、環境、地域の歴史、芸術、
移民や多文化共生などといったテーマを設定して、
調べ学習やフィールドワーク、
グループでの作品づくりなどに取り組みます。

このような総合学習型・プロジェクト型の授業は、
インクルーシブ教育との相性が良い面があります。

すなわち、活動の進め方や役割に幅があるため、
子ども一人ひとりの得意や
ペースに合わせた参加を設計しやすいのです。

こうした授業には、図書館員、環境団体、アーティストなど、
学校外の人びとが参加することも多くあります。

それによって、子どもたちは多様な大人や活動に出会い、
教科書による講義型の授業とは異なる学び方を経験できます。

このような学習活動は、障害のある子どもだけでなく、
いわゆる定型発達の子どもにとっても魅力的なものです。

こんな風に、イタリアのフルインクルーシブ教育は
「特別な子どものための特別な場」
を用意するのではなく、
「普通の授業そのものを、
多様な子どもが参加しやすい形にする」
という発想に基づいています。

治療からフルインクルーシブ教育へ

イタリアでは、20世紀前半に盲学校や聾学校は制度化されたものの、
それ以外の障害をもつ子どもの教育機会は不十分でした。

その後も1960年代までは
障害は教育よりも治療や保護の対象とされ、
施設や医療機関への収容が進んでいた経緯があります。

しかし1960年代後半から1970年代にかけて、
障害者運動、家族の運動、民主化運動が広がり、
「困難のある人を社会の外へ置くこと」
自体の是非が問われるようになりました。

そして教育の分野では、
1971年には障害のある子どもの通常学級での
教育を原則とする法律が成立したのをはじめとして、
分離教育からの転換が進んだのです。

1978年には精神医療において、
精神病院への長期収容型から、
地域で暮らしながら支援を受ける方向への転換がなされました
(バザーリア法)。

同法は
「困難のある人を施設に隔離するのではなく、
地域社会の中で生きる条件を整える」
という発想を社会全体に広げた点で、
インクルーシブ教育に通じるものがあります。

さらに1992年の立法では、
学校と地域機関の連携が制度として明確化され、
イタリアでは特別支援学校がほぼ廃止され、
障害のある子どものほとんどが地域の普通校で学ぶ
「フルインクルーシブ」の体制が定着したのです。

分離教育が差別の温存につながるという懸念

イタリアのフルインクルーシブ教育の根底には
「障害のある子どもには、教育を受ける権利だけでなく、
地域社会の一員として同世代の子どもたちとともに生活し、
学ぶ権利がある」
という考え方があります。 障害のある子どもを特別学校などに分離すると、
子どもが社会からも分離・排除されやすくなり、
それでは子どもの権利は保障されません。

また、特別学校を残せば
「どの子を普通学校に、どの子を特別学校に行かせるか」
という線引きがどうしても残ります。

それは構造的に差別を温存することにつながる
という考えがあるのです。

このような考えに立ち、イタリアではすでに1970年代から、
障害のある子どもの教育を受ける権利を、
分離された特別教育の中ではなく、
通常学校の中で保障する努力がなされてきました。

分離より「共生を支える」方向へ

さらに、精神医療における「バザーリア法」に
象徴される反施設化の流れが教育分野にも影響し、
教育の場面でも障害のある子どもを
地域社会の中で支えようとする動きが強まりました。

これらの動きは、冒頭でお話しした、
カトリック的な共通善、連帯、補完性、
参加の思想によって支えられ、
「分離」よりも「共生を支える」方向へ進みました。

そして「共生を支える」ために、
保護者、学校、医療、福祉、行政、
地域社会などが協力して
支援を組み立てる制度が
整えられていったのです。

通常学校の中に支援のシステムを組み込む

これまで見てきたデンマーク、ベルギーでは、
インクルーシブ教育を志向しつつも、
特別学級や特別学校も存在していました。

また両国では、
インクルーシブ教育をめざす過程で起きてくる
「通常学級の負担」の問題に、
学校の外の専門機関
(デンマークのPPR、ベルギーフランス語圏の地域ポールなど)
から通常学校に専門的支援を届ける仕組みを作ることで
対応しようとしてきました。

これに対してイタリアでは、
「外部から専門的支援を届ける」のではなく、
通常学校の「内部」に支援のシステムを組み込みました。

そうすることで、特別学校・特別学級など、
分離の形そのものをできるだけ残さないことをめざし、
結果、フルインクルーシブ教育を実現してきたのです。

フルインクルーシブを可能ならしめている
イタリアのシステムとは具体的にどのようなものか。

そのシステムはなぜ可能なのか。

そして、フルインクルーシブの実践の中で、
イタリアの課題は何なのか。 デンマーク、ベルギーのインクルーシブ教育の歩みを概観し、
日本のインクルーシブ教育の実情を思うとき、
イタリアのフルインクルーシブ教育のあり方に
興味は尽きません。





[YAHOOニュース]





ヨーロッパの中でも、際立った教育方針の実現ですね。















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Last updated  2026.08.16 14:17:13
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