扉のない休憩室

扉のない休憩室

May 3, 2008
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聖女エリフィシア。

呪われた地,この世の最果て,終焉が眠る場所,アズルを表す言葉は常に不吉だ。
この地に住む人間は少ない。水晶が豊富に眠るこの地には昔から魔獣,魔物が住み着いている。
人間はここで絶対強者にはなりえない。人間というアビリティは何の意味も持たない。
権力でも金でもなんでもいい。他人より圧倒的に秀でているものを武器にするしかこの地獄のような場所で生き残る術はない。
その中で,聖女は現れた。
彼女には地位もない。名声もない。金も従順な臣下もいない。
ただ,彼女には力があった。他人より,他のどの人間よりも優れていて使い物にならない力を持っていた。

理由はわからない。彼女に聞いても頓知が帰ってくるばかりだ。彼女の戦いに関する詳しい記述は残っていない。あの混迷を極めた旧暦末期を伝えるのはあの時代を生き抜いた生き証人達だ。
だが,旧暦を締め括る最後の戦い。人がリーフの聖戦と呼ぶ最大にして最後の戦いに関しては詳しく残っている。
魔物最後の砦,アラズナルグに篭城する兵力約10万。それを包囲する聖女エリフィシアの元に集まった兵力約6万+5人。
聖女の元には五人の英雄がいた。彼は戦いが終わると各々の道へと消えていく。共通することは,彼等は二度と歴史に出ることはなかった
一人は大魔導師。
寡黙でいたずら好きな聖女の盟友。
一人は盗賊。
金と名声と聖女だけが彼を動かすことが出来る。
一人は剣闘士。
一人で一万の敵を止めその剣技は敵さえも魅了した聖女の剣。
一人は歌姫。

一人は戦士。
その勇ましさに敵う者無し。その強に越える者無し。聖女を守る最強の盾。

一人は消え,一人は残り,一人は旅に戻り一人は一人と旅に出た。
かくして聖女と英雄,そして彼女の元につどいし戦士達によって旧暦の時代は終わりを告げた。
聖女はこの地に国を作り,自ら治めた。

彼女は聖王女,建国王として歴史に刻まれた。




この史実は間違っても真実ではない。確たる証拠があるわけでもなくただ脈絡とうけつげられてきた歴史だ。
過去の人よ,どうか教えてほしい。歴史ではなく整然とした真実を。
現代の人よ,どうか考えてほしい。歴史とはなんなのか。真実とは何なのか。
未来の人よ,どうか見ていてほしい。我々が紡いだ歴史は真実となりえるのだろうか。
この書を見たすべての人よ。
いつの日か真実が生まれるその瞬間が来るその時を,どうか信じていてほしい。










文章はここで終わっている。続きはない。
冷たい地下室。一人の男がその本を棚へと戻す。
年代もの長剣が動くたびに鳴る。暗闇の中でも,柄にはめられた水晶は決して光りを失わない。緑色の光りを。





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最終更新日  May 3, 2008 11:38:15 PM
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